雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

映画

光と硝酸銀と亡霊たち

日伊協会で『イタリア映画の夜明け』と題したセミナーの第一回を終えた。知っていることを話すセミナーじゃなくて、ぼくの知りたいことを話すセミナーだ。知りたいことを話すためには、知りたいことを調べなければならない。だから調べてみたいとして「イタ…

ネコと絶対音感と人類学的マシン

www6.nhk.or.jp 今朝テレビつけたら養老孟司さんが話していた。 「人間と違って動物は言葉をもたない。なぜか。すべての動物は絶対音感なんです。みなさんが例外なんです。私が「ネコ」というのと、司会者の女性が「ネコ」というのと、音の高さが違う。違う…

朝カル新宿「ヴィスコンティとは誰だったのか」(1)と(2)

2020/9/12 朝カル新宿、「ヴィスコンティとは誰だったのか(1)」 ひさしぶりの対面式でしたが、フェイスカバーはどうにも嫌なので、結局はマスクをつけて喋ることに。ときどき息が苦しくなりましたが、それでもリモートとは違う高揚感に後押しされて言葉が…

Quaquaraquà って誰のことだ:シャーシャの『真昼のふくろう』をめぐって

レオナルド・シャーシャの『真昼のふくろう』(竹山博英訳)を借りてきて読んだ。 実は、この小説を原作にした同名の映画を見て(日本未公開でテレビ放映されたときの邦題は「マフィア」)、おもわず原作の "Il giorno della civetta" にざっと目を通したの…

ダリダの『バン、バン!』(1966)訳してみた

youtu.be きっかけはカナダのグザヴィエ・ドランの『胸騒ぎの恋人』(2010)を見たから。 filmarks.com このなかで使われているイタリア語版の『バン、バン!』が実に見事に使われていたので、どうせなら歌詞を訳してみようと思ったしだい。 歌詞のプロット…

映画でヴェネツィアを旅してきた

朝日カルチャー立川の「映画で旅するヴェネツィア」、昨日、無事終了しました。COVID19 騒動のなか、マスクを付けておられる方がほとんどで、しかも遠方から来るはずだった友人が、社命により移動できなくなったとの連絡もあったりもしましたが、比較的多く…

ゾンビと免疫と来るべき共同体

ちまたでは、まだまだウイルスの話でもちきり。ローマの音楽院ではアジア人のレッスンがキャンセルされたとか、どこかの国の生物兵器ではないかとか、アメリカの対応に比べて我が国ときたらという嘆きとか。そんなおり、娘とウイルスの話をしていて、興味深…

デビィッド・ボウイのイタリア語:Ragazzo solo, ragazza sola (1970) 訳してみた

11月2日に朝カル横浜で「ベルナルド・ベルトルッチとは誰だったのか」というお話をしてきました。 この日は奇しくも、ルキノ・ヴィスコンティの誕生日なのですが、本人はこの日付を不吉なものと感じていたらしい。というのも、11月2日はイタリアで「死者の日…

朝カル立川セミナー「映画で旅する南イタリア」

以下に、土曜日のセミナーについて備忘のためツイートしたものまとめておきますね。 * * * 土曜日の立川のセミナーには大勢のみなさんに来ていただいて有り難かった。ただ、準備不足というか、準備を始めると次々とネタが出てきて収拾つかず。南イタリア…

タヴィアーニ兄弟の未公開作品 『Il prato(草原)』 について

ドイツ語版のDVDが届いたので、タヴィアーニ兄弟の「Il prato (草原)」(1979)を見る。『パードレ・パドローネ』の成功に続く野心作、日本未公開。音声はドイツ語かイタリア語が選択できるので、イタリア語で鑑賞。 主演は『パードレ・パドローネ』のサヴ…

タヴィアーニ祭り

ここのところタヴィアーニ兄弟の映画をずっと見てきました。そろそろ、まとめにかからないといけないのだけれど、そのまえに、メモを整理しておこうと思います。 1)まずはデビュー作ね。これは最初、フィルマークスにタイトルがなかったんだけど、なぜかイ…

映画が産声をあげるところ

2019/1/22@早稲田大隈講堂 映画が産声を上げるところ。そんな場所があるとすれば、たとえば昨日の大隈講堂の上映会もそのひとつなのかもしれない。以下、備忘のために。1本目は『ふたたま』: 冒頭こそ逃してしまったけれど、ぼくには安部公房の短編と思え…

ベルトルッチを追悼するドミニク・サンダ

今朝のツイッターで、こんな記事があると紹介された。見ればレプッブリカ紙の演劇欄に、あのドミニク・サンダがベルトルッチを追悼している。TWのコメントには「すばらしい文章だが、批判がないわけではない。『1900年』の撮られなかったシーンについて彼女…

怪物たちが生まれる時代に...

FBにこんな投稿を見た。 書かれているのはアントニオ・グラムシの言葉。こんな意味だ。 古い世界は死につつある。新しい世界はまだなお現れていない。このたそがれ時に怪物が生まれる。Il vecchio mondo sta morendo. Quello nuovo tarda a comparire. E in …

イタリア語スピーチコンテストをめぐって:動物とレプリカントの間で

1 スピーチコンテスト 土曜日は日伊協会主催のイタリア語スピーチコンテストに行ってきました。 今年優勝したのは斎藤紀子さん。スピーチのタイトルは『La Roma che ho ritrovato a Damasco』。 ダマスカスといえばシリアの有名な都市です。けれども、シリ…

M.ベロッキオの B.ベルトルッチ追悼書簡

Bernaldo Bertolucci (1941年3月16日 - 2018年11月26日) ベルトルッチの訃報が入った。77歳。しばらく前から病気に苦しんでいたという。この訃報に触れたマルコ・ベロッキオの公開書簡の言葉が、イタリアのネット記事に載っていたので、紹介したいと思う。…

コンタクトゾーンと認知症

TWでこんな記事をみかけた。ぼくは自分の親父のことを考えてしまった。 bunshun.jp ぼくの親父も、この記事にある「嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)性認知症」と診断された。症状が出たとき最初は驚いた。けれど介護保険の制度を頼り、病院で診断を受けてゆくに…

モリコーネ VS タランティーノ?

今月の10日、エンニオ・モリコーネ90歳の誕生日、イタリアのシネファクツ ( CineFacts!)というサイトから、巨匠がタランティーノを「おばか un cretino 」よばわりしたというニュースが配信された。記事はドイツのプレイボーイ誌を元ネタ *1 にしたもので…

Vecchio frack (1955) を訳してみた

ドメニコ・モドゥンニョといえば『ヴォラーレ Nel blu dipinto di blu』(1958)が有名だけど、その前に発表された『ヴェッキオ・フラック Vecchio frack』(1955)に触れる機会があった。なんとなく知ってはいたのだけれど、ちょっとじっくり聞いてみると、…

「結婚演出家」を楽しむために

『Viva!イタリアvol.4』予告編 昨日の日伊協会でのベロッキオの話、備忘のためにざっと概略を。 まずは「結婚演出家」のイタリア語タイトル il regista di matorimoni を解説。regista は確かに「演出家」なんだけど、映画なら「監督」。ついでに matorimoni…

ベロッキオのリアルをめぐって

このところ、ベロッキオについて考えている。3週間後には、少しまとまった話をしなければならないからだ。 www.aigtokyo.or.jp ここでは備忘のために、Filmarks のメモを再掲しておくことにしよう。 1)『母の微笑』 背景には、当時の時代設定(大聖年)と…

映画のリアルとイリュージョン

誰かがマルコ・ベロッキオの映画のことを「幻覚的なリアリズム」と読んで/呼んでいた。 なるほど、そうかもしれない。でも、あれは幻覚なのだろうか。むしろ、ぼくにはとてもリアルなものに見えたのだけど、それを幻覚と言ってしまうのは、すこしばかりイー…

トーテムポールを見上げるゾンビたち

www.youtube.com 映画のことはフィルマークスに書いているのだけど、この作品はまだリストアップされていないので、こちらに。 お題はこの映画。『飢えた侵略者』(2017)。原題は英語タイトルが Ravenous 、フランス語がLes Affamés 。 ゾンビ映画の「再発…

ジェルソミーナとローザ、あるいは『道』の反復をめぐって

授業でやってる『道』の冒頭のシーンの続き。 ここでのダイアローグなんだけど、ポイントはやはりローザの存在。 近所の女性がジェルソミーナに近づいて来て言う。 - Te ne vai, Gelsomina? (行くのかい、ジェルソミーナ?) そこでジェルソミーナは「Parto…

Una bocca di meno da sfamare... (フェリーニの『道』より)

フェリーにの『道』のセリフだけど、先日、中級の授業で質問が出た箇所がこれ。 T'impara un mestiere anche a te e guadagni qualcosa anche te e qui in casa è una bocca di meno da sfamare...(Dalla battuta di Madre, "La strada" in IL PRIMO FELLINI…

あらゆる終わりを超えて響き渡る「叫び」

先日、横浜の朝日カルチャーセンターで『テオレマ』について話してきました。しかも「名作の謎と秘密」というシリーズだったのですが、いやはや、さすがにパゾリーニは簡単ではありません。語りきれなかったことや、まだまだわからない疑問も含めて、これか…

母の日の翌日、パゾリーニを訳してみた

www.youtube.com 昨日はずっと「親和力」のことを考えていた。母の日だったのだ。だから、今朝、一日遅れのイタリアからパゾリーニの詩が届いたのだけど、それはまさに「親和力」についての詩だと気がついた。タイトルは「母への懇願 Supplica a mia madre …

まだ読んでいないメルロ=ポンティと映画についての覚書

映画は今はまだ冒頭から終わりまで藝術であるような作品をそれほど多く提供しておりません。人気俳優に対する熱狂や、ショットの変化によるセンセーショナルな効果、あるいは筋の急転、美しいシーンの挿入または気の利いた対話の挿入それぞれが、みな映画に…

ヴィスコンティ『Cadaveri』(1941)を訳してみた

今年の朝日カルチャーセンター(横浜)のイタリア映画講座は、ルキノ・ヴィスコンティについて話している。昨日はその第2回目だったのだけど、いつもにまして多くの受講者がこられてうれしい限り。さすがにフェリーニよりも人気がありますねと言われると、…

祝、エンニオ・モリコーネ。初のオスカー獲得!

エンニオ・モリコーネがついにオスカー受賞した。 2007年にはすでに功労賞をもらっている。ふつうなら功労賞はキャリアの最後にもらうもの。ところがモリコーネは「これが出発点だよ」とコメントしていた。そして、今、おん年87歳にして、新作をもっての堂々…