雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

ノガ・エレズ『ヴァンダリスト』を訳してみた

ノガ・エレズはずっと気になっていたシンガーソングライター。最初に知ったのはネトフリの『ハート・オブ・ストーン』(2023)の主題歌「Quiet」だ。なんとも特徴的な音を聴かせてくれるのでチェックしていた。 ぼくが映画を観たのは2023年の8月29日。ところ…

アントニオーニ、ヴィッティ、そしてドロン:『太陽はひとりぼっち』(1962)

アラン・ドロンとモニカ・ヴィッティの笑顔。『太陽はひとりぼっち』のワンシーンだけれど、この屈託のないふたりの太陽のような笑顔がエクリプス(日蝕)で消えてゆく。だからこそ、この輝きを移さなければならなかったのだろう。 さて、土曜のセミナーが終…

ロベルタ・トッレ『Mi fanno male i capelli』(2023)短評

RaiPlay. 25-117。 ロベルタ・トッレは大好きな監督さんなのだけれど、近ごろは少しご無沙汰していたところ、この映画が Rai で視聴可能なのを知り、朝から観入ってしまう。 タイトルの「Mi fanno male i capelli」はモニカ・ヴィッティがミケランジェロ・ア…

『Canzone dell'amore』(1930)短評

DVD(Ripley's home video)。25-113。イタリア語、英語字幕。このDVDにはイタリア語字幕の選択がない。残念。 ジェンナーロ・リゲッリの『Canzone dell'amore(愛の歌)』は1930年に公開されたイタリア初のトーキー。まずはムッソリーニを前に試写を行い、…

『アヨツィナパの43人』短評

ネトフリ。25-100。『アヨツィナパの43人』を観た。メキシコで起こった失踪事件を描いたアルゼンチンのドキュメンタリー。原題は「Los días de Ayotzinapa」(アヨツィナパの日々)。 www.youtube.com ぼくがこのドキュメンタリーに関心を持ったのは、2020…

パストローネの『カビリア』(1914):『炎の交響曲』(イルデブランド・ピッツェッティ)に字幕をつけてみた

今日の授業で使った映像をアップしておきます。パストローネによるイタリア史劇の傑作『カビリア』(1914)から、こどもたちがモロク神の生贄となるシーンに字幕をつけたものです。映画については数年前に書いた記事があります。そちらをご覧ください。 hgkm…

自由を歌う2曲のカンツォーネ:A bocca chiusa (Daniele Silvestri) と La libertà (Giorgio Gaber)

ヨーロッパ文化論という授業でイタリア映画のことを話している。先日は6月2日の共和国記念日を紹介しながらパオラ・コルテッレージの『ドマーニ!愛のことづて』(2023)を紹介した。紹介しながらの発見がダニエーレ・シルヴェストリ(Daniele Silvestri, R…

イタリア映画祭2025、備忘録

今年のイタリア映画祭は文化会館の前夜祭(4/30)から。上映されたのはパオロ・ジェノヴェーゼの『狂おしいマインド (FolleMente)』。ぼくは監督へのインタビューを頼まれたので3回ほど観て質問を作りをしたのだけれど、楽しかった。見るほどに発見があった…

P.ジェノヴェーゼ&L.ミニエーロ『Incantesimo napoletano』(1999)短評。

イタリア版DVD。25-54。パオロ・ジェノヴェーゼとルーカ・ミニエーロのデビュー作。タイトルを訳せば「ナポリの呪縛」というところか。incantesimo は「魅力」ということでもあるけれど、同時に、その魅力に囚われてしまうことでもあるわけだ。 映画は最高に…

ウベルト・パゾリーニは映画を通して世界を見ようとする

今日は彩の国さいたま芸術劇場映像ホールにて、ウベルト・パゾリーニ監督による『いつかの君にもわかること』の上映後セミナーをやってきました。ぼくが映画を語るときはイタリアがフィールドですが、この映画の舞台は北アイルランドのベルファスト。主演は…

エットレ・スコラ『La congiuntura』(1964)短評

DM。 25-42。イタリア語版。字幕なし。エットレ・スコラ祭り。 スコラの長編第2作目。デビュー作の『もしお許し願えれば女について話しましょう』(1964年)がヒットしたからだろう。気心の知れたガズマンを主役に、相手役にはアメリカからショーン・コリン…

アラン・ドロンと『若者のすべて』

昨日(2025.2.26.)は文京区シビックセンターでの映画上映会とトークショー。ご覧のように「アラン・ドロンを偲び」というお題をいただいたので、ヴィスコンティの『若者のすべて』とアラン・ドロンのことをお話ししてきました。 文京区シビックセンターの小…

サンレモ2025:ルーチョ・コルシの『タフになりたかった』

www.youtube.com 今年のサンレモの収穫はルーチョ・コルシ。準優勝だったけどぼくは気に入った。なんだかヒョロっとしたモヤシっ子なんだけど、その目には光るものがある。俳優でいえば『ドッグマン』のマルチェッロ・フォンテみたいな光。ギターを持って歌…

EUフィルムデーズ・トークイベント、あるいはパオロ・ジェノヴェーゼのこと

27日の金曜日、渋谷のイメージフォーラムで『人生の最初の日』のことを話してきました。監督はパオロ・ジェノヴェーゼ。名前は知っていたのですが、監督作品はあまりみたことがなかったので、これ幸いとDVDも手に入れて、そのほかにもいろいろ見てみました。…

ジェノヴェーゼ『Tutta colpa di Freud』(2014)短評。

Ok。24-179。イタリア語音声で字幕なし(ロシア語らしきものがあったけど字幕なしと同じ)。ジェノヴェーゼ祭りのなかで出会った。これが一番好きかもしれない。ここには時間のトリックはなし。ジェノヴェーゼは基本喜劇の人だと思うのだけど、だんだんと深…

ゼフィレッリ『Camping』(1957)短評

24-172。ゼッフィレッリ祭り。イタリア語音声、スペイン語字幕。フランコ・ゼフィレッリの監督デビュー作。1957年イタリア公開、日本未公開。 1950年代末のロードムービー。ヴァカンス映画としてはルチャーノ・エンメルの『八月の日曜日』(1950)の延長線上…

アルジェント「動物3部作」のこと

なんという僥倖。こいつを3本まとめて暗闇で鑑賞できるなんて。 じつはパンフに短い原稿を寄せたので、この3本を見直しました。見直してみると、これがやっぱりすごいのですよ。いろいろ発見もあったし、時代もあるのだろうし、でもアルジェントがやっぱり…

エリオ・ペトリ『L'assassino』(1961)短評

YT。24-163。マストロヤンニ祭り。 大収穫。冒頭から引き込まれる。夜明けに帰って来る男(この男は夕方より明け方が好きなのだ)。車をメカニックに託すと階段を登り、部屋に入る。壁には高そうな絵画。ジャケットを脱ぐ。シャツはピンとしているし、ネクタ…

モニチェッリ『Il medico e lo stregone』(1957)短評

YT。24-161。マストロヤンニ祭り。 これはおもしろい。1957年の『Il medico e lo stregone』。監督はマリオ・モニチェッリ、音楽ニーノ・ロータ、原案はAge&Scarpelli のコンビ。タイトルは日本語で言えば「医者と呪術師」といったところ。 舞台は山の上にあ…

ガード・オズワルドの『Screaming Mimi』(1958):フェリーニとアルジェントへの扉

YT。24-156。 何年振りかのアルジェント祭り。わけあってこの映画を観る。原作がアルジェントのデビュー作『喜びの毒牙』(1970)と同じフレデリック・ブラウンの『通り魔』(The Screaming Mimi, 1958、創元推理文庫、 1963)。こちらはその最初の映画化。 …

ルノワール『荒れ地』(1929)短評

ジャン・ルノワール Blu-ray BOX I 、『どん底』/『荒れ地』。24-139。ルノワールによる冒険もの。画質はスタンダード。あまりよくない。 1830年のフランスによるアルジェリア征服から100年を記念する作品。『騎馬試合(Le tournoi dans la cité)』(1928…

アリーチェ&JRの短編2本

24-135。 今年のヴェネツィア映画祭(第81回)の非コンペ部門に出品されていた『ALLÉGORIE CITADINE』を見た。アリーチェ・ロルヴァケルと写真アーティストのJRの共作。次のサイトにアドレスを登録すれば観ることができる。 www.festivalscope.com タイトル…

備忘録:アリーチェ・ロルヴァケル

mubi.com アリーチェ・ロルヴァケルが気になっている。最初に見たのは『幸福なラザロ』だった。いい映画だと思った。試写で見たのだけど一緒に見たHさんは、なんだかよくわからない映画だったというので、ラザロは聖書に登場する人物の名前だよねと説明した…

L.トーヴォリ『Il generale dell'armata morta(死んだ軍隊の将軍)』(1983)短評

8月15日に観るのにふさわしい映画だった。将軍というのは、生きた軍隊を率いるものだが。しかし、戦地に没した兵士たちの遺骨収集のあたる将軍がいるとしたらどうだろうか。彼はいわば、死せる軍隊の将軍なのだ。生きた軍隊は、ひとたび戦争が怒れば、死せる…

モレッティ『Io sono un autarchico』(1976)短評

イタリア版DVD。イタリア語字幕付き。24-103。モレッティの長編デビュー作。スザンナ・ニッキャレッリによるドキュメンタリーとナンニ・モレッティへのインタビューが付録として収録されている。 興味深かったのはヴィットリオ・タヴィアーニへのインタビ…

ブラゼッティ『Tempi nostri - Zibaldone n.2』(1954)短評

イタリア版DVD。イタリア語字幕あり。24-98。 タイトルは「わたしたちの時代、雑記帳その2」。これは1952年の『懐かしの日々』の続編。このときのぼくのメモにこうある。 1950年台のイタリア映画では、ロッセリーニやデシーカらのネオレアリズムのインパク…

6月22日朝カル、ソフィア・ローレンのこと(1)

土曜日に横浜でソフィア・ローレンのことを話してきた。このところイタリアの女優さんたちを取りあげ、その人生と映画を振り返っている。ジーナ・ロッロブリージダから始まり、クラウディア・カルディナーレ、シルヴァーナ・マンガノ、そしてアンナ・マニャ…

Mario Monicelli 『La mortadella』(1971)短評。

某サイトにて。24-75。ローレン祭り。 監督はマリオ・モニチェッリ。ローレンとの仕事はこの作品が唯一。これ、抜群におもしろい。 タイトルの「La mortadella」は、有名なボローニャのハムのこと。物語はこのモルタデッラ・ハムをアメリカに持ち込もうとし…

マウロ・ボロンニーニ『Ci troviamo in Galleria』(1953)短評

YT. 24-89。ローレン祭り。未公開。 マウロ・ボロニーニの監督デビュー作で、タイトルは「Ci troviamo in Galleria (ガレリアで会おう)」。ガレリアとは、ローマの寄席芸人たちが集まる場所。芸人といっても、なかなか仕事にありつけず食うに困っている連…

マリオ・ボンナルド『Il feroce Saladino(残忍なサラディン)』(1937)短評

YouTube。24-80。順番が少し前後。修復版が全編がアップされているのだけど、最後の2分間はフィルムの喪失により音声のみ。 タイトルの「il feroce Saldino」は「残酷なサラディン(ペルシャの王)」の意味だが、実は1937年当時に流行したペルージャ社製の…