雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

『愛を語っておくれ、マリュー』を訳してみた

 

 先日あるパーティで、友人がこの歌を歌ってくれた。そのときの流れで、歌う前にこの歌詞を即興で訳すことになったのだけど、あらためて読み返してみると、じつにいい歌だ。

 作詞はエンニオ・ネーリ(1891–1985)。作曲はチェーザレアンドレア・ビクシオ(1896 –1978)。歌詞のなかで歌われる「マリュー」とは作曲家ビクシオの妻メアリー(Mary)のことだという。

 とはいえ、この曲を大ヒットさせた映画『殿方は嘘つき(Gli uomini che mascalzoni)』(1932)のなかでリア・フランカ(Lya [Libia] Franca:  (Trieste, 1912 – Roma, 1988)が演じた香水店の店員もマリウッチャ(Mariuccia)。これはマリア(Maria)の愛称なのだけど、さらに約めるとつまりマリュー(Mariù)となる。

 このマリュー/リア・フランカが実にかわいい。タクシー運転手をする父親と二人だけのつましい暮らしぶりなのだけど、勤めているのが香水店だから、それなりに身だしなみもしっかりしている。そんな彼女に惚れるのが運転手のブルーノ/ヴィットリオ・デ・シーカ。よくあるボーイ・ミーツ・ガールものなのだけど、これが1932年のイタリア映画としては画期的だったという。デ・シーカはこう書いている。

この映画は熱狂的に迎えられました。それまでのイタリア映画といえば、主人公は英雄だったり情熱的な悲劇の人だったわけですが、この映画はそういうものとは違っていたというのも理由だったのです*1

 けれども、この画期的な軽喜劇はファシズム期に特有のジャンルとして「白い電話」と呼ばれるようになり、非政治的な娯楽であるがゆえに、ファシズムに加担するものとして批判されたこともある。しかしフィルムが修復され、VHS や DVD となって誰でも見ることができるようになると、その評価は少しずつ変わってくる。

 ぼくが初めてみた時の感想もまた、こんな楽しい娯楽映画があったのかというもの。デ・シーカの優男ぶり。リア・フランカの圧倒的なかわいらしさ。そして、この『愛を語っておくれ、マリュー』の響き。

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では、以下に歌の歌詞を訳出しておきますね。ご笑覧。

きれいだよ、今夜はとても、マリュー
きみの青い瞳に星が微笑み輝いている
たとえ明日の運命がきびしくても
今日は一緒にいられる 嘆くことはない

(リフレイン1)
愛を語っておくれ、マリュー
ぼくの人生はすべてきみのもの
きみの美しい瞳の輝きは
まるで夜空に煌めく星のよう

(リフレイン2)
夢じゃないよね
きみは本物だよね
きみと踊れば 嫌なことを忘れる
愛を語っておくれ マリュー

きみって美しく恐ろしいセイレーンかもしれない
青い瞳を見れば誰もが心奪われるのかもしれない
それでもぼくは、世間からどんなに揶揄されるとしても
底なしの深淵に落ちるほうがましさ、きみと一緒なら

(リフレイン1)
(リフレイン2)
(リフレイン2)

原語の歌詞:

Come sei bella, più bella stasera, Mariù
Splende un sorriso di stella negli occhi tuoi blu
Anche se avverso il destino domani sarà
Oggi ti sono vicino, perché sospirar?

[ritornello 1] 
Parlami d'amore, Mariù
Tutta la mia vita sei tu
Gli occhi tuoi belli brillano
Come due stelle scintillano

[ritornello 2] 
Dimmi che illusione non è
Dimmi che sei tutta per me!
Qui sul tuo cuor non soffro più
Parlami d'amore, Mariù

So che una bella e maliarda sirena sei tu
So che si perde chi guarda quegli occhi tuoi blu
Ma che importa se il mondo si burla di me?
Meglio nel gorgo profondo ma sempre con te

[ritornello 1] 
[ritornello 2] 
[ritornello 2] 

 

Parlami d'amore Mariu'

Parlami d'amore Mariu'

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*1:De Sica, La Porta del Cielo, Momorie 1902-1952, Roma, Avagliano, 2004, p.80.