雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

2018-01-01から1年間の記事一覧

ベルトルッチを追悼するドミニク・サンダ

今朝のツイッターで、こんな記事があると紹介された。見ればレプッブリカ紙の演劇欄に、あのドミニク・サンダがベルトルッチを追悼している。TWのコメントには「すばらしい文章だが、批判がないわけではない。『1900年』の撮られなかったシーンについて彼女…

怪物たちが生まれる時代に...

FBにこんな投稿を見た。 書かれているのはアントニオ・グラムシの言葉。こんな意味だ。 古い世界は死につつある。新しい世界はまだなお現れていない。このたそがれ時に怪物が生まれる。Il vecchio mondo sta morendo. Quello nuovo tarda a comparire. E in …

ジェフ・ベック、こどもたちを思うバラードを訳してみた

最近ハマっている『Loud Hailer』。2016年のアルバムなんだけど、そのなかの一曲 Scared for the childeren がすごくよい。ジミヘンの『エンジェル』を明確に意識した曲だというのだが、そんなことを言われるとよけいにグッときてしまう。 www.youtube.com …

イタリア語スピーチコンテストをめぐって:動物とレプリカントの間で

1 スピーチコンテスト 土曜日は日伊協会主催のイタリア語スピーチコンテストに行ってきました。 今年優勝したのは斎藤紀子さん。スピーチのタイトルは『La Roma che ho ritrovato a Damasco』。 ダマスカスといえばシリアの有名な都市です。けれども、シリ…

M.ベロッキオの B.ベルトルッチ追悼書簡

Bernaldo Bertolucci (1941年3月16日 - 2018年11月26日) ベルトルッチの訃報が入った。77歳。しばらく前から病気に苦しんでいたという。この訃報に触れたマルコ・ベロッキオの公開書簡の言葉が、イタリアのネット記事に載っていたので、紹介したいと思う。…

コンタクトゾーンと認知症

TWでこんな記事をみかけた。ぼくは自分の親父のことを考えてしまった。 bunshun.jp ぼくの親父も、この記事にある「嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)性認知症」と診断された。症状が出たとき最初は驚いた。けれど介護保険の制度を頼り、病院で診断を受けてゆくに…

「世間様」から踏み出すこと:イタリア語の《 proprio 》をめぐって

FBに投稿されたイタリア語のレッスンビデオです。ここでは《proprio》という単語の用法が紹介されています。 «proprio»というイタリア語に苦労している人は多いですよね。ここでは、その形容詞的用法が説明されてます。図式的にその用法をまとめれば次の3つ…

モリコーネ VS タランティーノ?

今月の10日、エンニオ・モリコーネ90歳の誕生日、イタリアのシネファクツ ( CineFacts!)というサイトから、巨匠がタランティーノを「おばか un cretino 」よばわりしたというニュースが配信された。記事はドイツのプレイボーイ誌を元ネタ *1 にしたもので…

Vecchio frack (1955) を訳してみた

ドメニコ・モドゥンニョといえば『ヴォラーレ Nel blu dipinto di blu』(1958)が有名だけど、その前に発表された『ヴェッキオ・フラック Vecchio frack』(1955)に触れる機会があった。なんとなく知ってはいたのだけれど、ちょっとじっくり聞いてみると、…

「結婚演出家」を楽しむために

『Viva!イタリアvol.4』予告編 昨日の日伊協会でのベロッキオの話、備忘のためにざっと概略を。 まずは「結婚演出家」のイタリア語タイトル il regista di matorimoni を解説。regista は確かに「演出家」なんだけど、映画なら「監督」。ついでに matorimoni…

ベロッキオのリアルをめぐって

このところ、ベロッキオについて考えている。3週間後には、少しまとまった話をしなければならないからだ。 www.aigtokyo.or.jp ここでは備忘のために、Filmarks のメモを再掲しておくことにしよう。 1)『母の微笑』 背景には、当時の時代設定(大聖年)と…

映画のリアルとイリュージョン

誰かがマルコ・ベロッキオの映画のことを「幻覚的なリアリズム」と読んで/呼んでいた。 なるほど、そうかもしれない。でも、あれは幻覚なのだろうか。むしろ、ぼくにはとてもリアルなものに見えたのだけど、それを幻覚と言ってしまうのは、すこしばかりイー…

憲法記念日にカフカ

憲法記念日の今日、朝からカフカの『審判』に出てくる寓話、「法の前にて」について考えた。 ポイントは3つ。 1つは、その門が開いてるということ。空いている門に入れないのはそこに門番がいて「今は入れない」という。田舎から来た男はそれを信じて入れ…

クランベリーズの『ゾンビ』を訳してみた

昨日、バンドメンバーからクランベリーズのある曲をやろうという提案があった。ギターを取り出してコードを探っていたのだけど、ぼくはどうしてもこっちの曲が頭から離れない。歌ってみるとシンプルなコードにキーも低め。案外いけるぞ、なんて思いながら歌…

トーテムポールを見上げるゾンビたち

www.youtube.com 映画のことはフィルマークスに書いているのだけど、この作品はまだリストアップされていないので、こちらに。 お題はこの映画。『飢えた侵略者』(2017)。原題は英語タイトルが Ravenous 、フランス語がLes Affamés 。 ゾンビ映画の「再発…

プロフェッソーレとマエストロ

Retweeted 中田考 (@HASSANKONAKATA): 大学の教員は、小中高の教師とは根本的に違います。大学では教員が教えるのではなく、学生が学ぶのです。少なくとも私が大学生の時はそれが大学というとものだ、ということには学生と教員の間に広範な合意があったと思…

マン、ヒューマン、デビルマン...

www.youtube.com テクノビート 単調な波形 MAN HUMAN という声 反復して 反響する MAN MAN MAN MAN MAN の連呼 HUMAN の解体 ビートは 止まらない エレクトリックな装飾音 幾重にも纏い 先へ先へと 止まる気配のないビート まるで なんとしても あの真紅の …

ジョヴァノッティのアモーレ、ダンテのアモーレ

www.youtube.com ジョヴァノッティを知ったのはたぶんこの曲だったと思う。NHKのテレビイタリア語が始まったのは1990年だけど、この曲はその4年後に発表されている。たしか、ちょうどそのころ出演しはじめたダニオ・ポニッシさんが番組のなかで紹介して…

ユー・バーン・ミー・アップ、訳してみた

あけましておめでとうございます。 お雑煮つくって、おせちを食べて、おとそを飲んで、初詣に行って帰ってきたら、新年早々に、飛び込んできたのがブライアン・イーノのこのツイート。これ、ぼくの大好きなアルバムなのです。 Robert Fripp: You Burn Me Up …