2013-01-01から1年間の記事一覧
先日、『イスタンブールの赤 Rosso Istanbul』という小説(あるいは随筆?)を発表したフェルザン・オズペテク。トルコ生まれにしてイタリア映画を代表する監督である彼が、とても興味深いフレーズをツイートをしていたので、ここで紹介してみたい。 Ci sare…
あるナポリの詩人のフレーズがぼくをとらえた。こんなフレーズだ。 È la più certa prova d'amore quella di un uomo che cambia parere per essere d'accordo con la donna. (Erri De Luca [1950- ] ) 【男が見解を変えて女と合意しようとすることほど確実…
10月3日、哀しいニュースが飛び込んで来た。 シチリア島とチュニジアの間に浮かぶランペドゥーザ島の沖で、アフリカからの難民を船が火災を起こして沈没したというのだ。全長20メートルの船には500人以上がすし詰めになっていたという。2日前に乗っ…
今朝のTVサンデーもニングを観ていたら、「風をよむ」のコーナーでヘイトスピーチを取り上げていた。そこでは、ヨーロッパでもそうだが、日本でもヘイトスピーチがネットだけではなく路上でも横行していると報じられていた。これに対してアンチ・ヘイトスピ…
「あまちゃん」もいよいよ来週で終わりだ! もちろんそんなことはわかっていた。けれども「最終週」という文字を見た瞬間、わかっていたことを確認しただけなのに、なぜかぐっとこみ上げてくるものがある。 そうなのだ、「あまちゃん」は、わかっていること…
Sacro Gra - Official Trailer - YouTube 第70回ヴェネツィア映画祭の金獅子賞は、なんと劇映画ではなくドキュメンタリー映画に贈られるたという。しかもイタリア人監督ジャンフランコ・ローシによる国産のドキュメンタリー作品で、タイトルは『 Sacro GRA…
今週の『おら、みんなに会いでぇ!』を見ての感想を一言で言えば、パンドラの箱を開けてしまっても、人生は続くのよ、というところだろうか。 「人生は続く」というのは小泉今日子のセリフだ。映画評論家の町山さんに言わせると「アッバス・キアロスタミ監督…
あと1ヶ月ほどとなった「あまちゃん」だが、今日はその劇中映画「潮騒のメモリー」のラストシーンの撮影の場面だった。 思い出してみよう。瀕死の母を演じる鈴鹿ひろ美(薬師丸)が、予定外の演技で布団から起きだし、タンスの引き出しを開けると、この動き…
言葉というのは難しい。 友だちなんかと喋っているときは感じなくても、大勢の前で話さなければならなくなるとさすがに言葉を選ぶ。さらには、こうしてものを書いていると、どうしたって慎重にならざるをえない。さらにぼくなんかは、外国語も扱うから、そう…
宮崎駿の『風立ちぬ』を見た。 感想を書いておこうと思ってしばらくいろいろ考えていたのだけど、考えれば考えるほど書くべきことが広がってゆき、調べることが増えてゆく。この映画にはそんな広がりがある。そんな広がりのある映画を別の言葉で言えば傑作と…
ここのところ毎年8月には倉敷に帰省している。 帰省するとまずお寺に挨拶に行き、山の畑から榊や彼岸花をいただくと、少し離れた墓地にまわり、墓石を掃除し、花々を飾り、お経をあげる。セミの鳴き声のなかで汗が流れ落ちる。 なんだか、ありふれたことを…
原発事故を描く映画『朝日のあたる家』が、日本各地の映画館から上映拒否を受けているという。監督の太田隆文さんのブログにはこんな言葉が記されている。 全国の映画館と交渉を続けている。原発事故を題材とした映画なので大手映画館チェーンは上映拒否だと…
選挙が近づいてます。 いろいろ言われてますが、ぼくにとって選挙の争点はやはり「原発」です。原子力発電というものを一体どう考えればよいのか?反対すべきなのか?それとも賛成すべきなのか? ぼくは今まで原発は胡散臭いと思ってきました。あれはヤバい…
『あまちゃん』の「東京編」の面白さが少しわかってきた気がする。 このところ、東京に出たアキ(能年)が、NGを42回も出したり、選挙でランク外になったり(繰り上げ当選するのだが)と、そのダサさを全開にする一方で、北三陸に残ったユイの壊れぶりが…
なかなか風邪が抜けない。だからタバコが旨くない。旨くないからあまり吸わない。こういうのが健康的なのだろうか?でもまあ、不健康なことのできる健康のありがたみがよくわかる。はやく不健康なことができる健康を取り戻さなければ… ともかくもそんな状態…
週末にカゼをひいた。 木曜日あたりから調子が悪かったのだけれど、金曜日の午後に帰宅、熱が少々あるのでそのままダウン。なんとか夕食をとってまたダウン。土曜日の早朝、なんとか熱が下がったので飛び起きる。正午前から横浜の朝日カルチャーセンターで映…
ぼくは授業の冒頭に Buongiorno, come state? (おはよう、みんな元気?)を繰り返す。授業が終われば教室を出てゆく学生たちに Arrivederci(また会おう) を繰り返す。この繰り返しによって「刻み込まれたもの quello che è insegnato (教えられたもの)…
「おら、東京さ行くだ」と言って、ついにアキが東京へ旅立った(正確には "東京に戻る" )。それにしても土曜日の第一部「故郷編」の最終回はお見事でした。備忘のためにも、その見事さについて記しておきたい。 まずは春子/小泉今日子のセリフから。 あの…
まずは東京新聞のこんな記事から。 自民党の高市早苗政調会長は十八日、原発の再稼働について「東京電力福島第一原発事故で死者が出ている状況ではない」として、原発再稼働を主張した自らの発言について「誤解されたなら、しゃべり方が下手だったのかもしれ…
マックルモアー&ライアン・ルイスの『アイリッシュ・セレブレーション』は、フェイスブックで紹介してもらった曲ですが、なんだか魂を揺さぶるような力を感じました。思わず日本語してみれば、その内容はまさに「アイルランド式言祝ぎの歌」。 歌っているの…
イタリア人にとってはキング・オブ・ロックンロール、おらが国のエルヴィス Elvis di noialtri 。ぼくの歳ぐらいのイタリア人で知らないヤツなんていない。 そんなリトル・トニーの訃報がはいった。 あれはたしか、初めて訪れたヴェネツィア映画祭でのこと。…
エンツォ・ヤンナッチの歌う『王に会ったよ Ho visto un re 』を日本語にしてみました。もともとは、ダリオ・フォーの舞台『おいらは考えて歌うぜ Ci ragiono e canto 』(1966年)のための曲だそうです。作詞はフォー、作曲はパオロ・チャルキ。 歌の内容に…
「おらのママに歴史あり」の最終回(土曜日)、結局アキのおじいちゃん(蟹江敬三)は、一度は引退を宣言したものの、再び遠洋に出る漁船に乗り込むことを決める。そのときのセリフがこれだ。 おらは思っていたほどジジイじゃなかった。じじいと一緒いたら、…
ビル・ブルフォードは大好きなドラマーだ。そのドラミングは「ジャズにしてはロックの要素が強く、ロックにしてはジャズの要素が強い」と言われる。特徴的なのはスネア。硬くチューニングされた高音が、子気味よく変則的に打ち込まれてゆく。本人によれば、…
イタリアの友人がやってるネルドブラザーズ Neldo brothers が、U2の「ニューイヤーズデイ」のカヴァーを YouTube にアップした。 http://www.youtube.com/watch?v=-l2P4a2s4OY イタリア語では〈ウー・ドゥエ〉と発音されるU2のこの曲は、1983年の『WAR …
なあ、おれたちはある意味、パーフェクトな組み合わせだったんだ、5本の指みたいに。(170頁) かつて多崎つくるには居場所があった。5本の指みたいな「パーフェクトな組み合わせ」と呼ばれるものがそれだ。 始まりは公立高校一年生の夏だったという。つくる…
兄はタメルラン・ツァルナエフ26歳、弟はジョハル・ツァルナエフ容疑者19歳。 4月15日、このふたり兄弟が仕掛けた爆弾がボストンマラソンのゴール付近で爆発。19日、兄は銃撃戦のすえ死亡、弟もアメリカの威信をかけた大捕り物のすえ拘束された。ニ…
村上春樹の新作、昨日の夜11時ごろから読み始めた。 この人の本は読み始めるとやめられないが、今回はとくにそうだ。村上好みの謎解き・ミステリーの話型を採用しながら、そのシンプルな物語がぼくをとらえてはなさない。文字を追う目が真っ赤になって悲鳴…
春なので春らしい曲をひとつ。 フェルザン・オズペテクの『明日のパスタはアルデンテ』のラストに流れる謡で、Kutlama という。歌うのはオズペテクお気に入りのセゼン・アクス。トルコポップス界の女帝と呼ばれる彼女の声は、葬儀と結婚式、生と死の重なり合…
「ジーンズショップがつぶれ、カラオケがつぶれて、その後にできた100円ショップもつぶれた。100円ショップがつぶれたら町も終わりだで」 新しく始まったNHKの朝ドラ「あまちゃん」で、三陸鉄道の駅員大吉(杉本哲太)が久しぶりに帰ってきた春子(…