雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

ダンテのソネット "Tanto gentile e tanto onesta pare" 訳してみた

Twitterにこんな記事が流れて来た。 「私はベア(トリーチェ)のために何だったてやった。」「まずは『新生』を書いた。」「それから『神曲』」「しまいには、天国にいれってやったんだ」「それで、彼女は何してくれたって?」「他人に挨拶しただけだ!」 ht…

長崎の教皇と「死に神」の舞い降りた場所

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52550690U9A121C1ACYZ00/ 今朝、教皇フランシスコが長崎を訪問したニュースを見る。アルゼンチン生まれの教皇の母語スペイン語で、核廃絶を訴えた。 長崎は雨、雨がっぱの参列者。気になったのはその場所。あの平和公…

デビィッド・ボウイのイタリア語:Ragazzo solo, ragazza sola (1970) 訳してみた

11月2日に朝カル横浜で「ベルナルド・ベルトルッチとは誰だったのか」というお話をしてきました。 この日は奇しくも、ルキノ・ヴィスコンティの誕生日なのですが、本人はこの日付を不吉なものと感じていたらしい。というのも、11月2日はイタリアで「死者の日…

朝カル立川セミナー「映画で旅する南イタリア」

以下に、土曜日のセミナーについて備忘のためツイートしたものまとめておきますね。 * * * 土曜日の立川のセミナーには大勢のみなさんに来ていただいて有り難かった。ただ、準備不足というか、準備を始めると次々とネタが出てきて収拾つかず。南イタリア…

Rock'n'Roll のイントロ・ドラムリフ再訪

5年前、この曲をスタジオでやろうということになったときだ。ぼくはイントロのドラムリフに手こずって、こんな記事を書いている。 hgkmsn.hatenablog.com まあ、この記事では複雑なことを書いているけれど、それからぼくはこんなカウントを思いついた。12…

Azzurro (1968) 訳してみた

この曲には個人的な思い出がある。 イタリア語を習い始めの頃だ。ローマから来た留学生に『Azzurro』が入ったアルバムをプレゼントしてもらった。自分はそんなに好きじゃない。そういいながら彼女は、でもイタリア語やるなら持っておいてよいと思う。たしか…

イタリア語の教室、動詞《andare》 のこと

まずはこんなツイートから。 先週「andare(仏語allerでもよい)を活用するとなんでvが入るんですか?」今週「動詞の不規則活用は、1,2,3人称単数(io, tu, lui/lei)と3人称複数(loro)に多いのはなんでですか?」初級文法ゆえの難題をぶつけられた。 — Ko…

日本国憲法9条とイタリア共和国憲法11条

ずっと疑問だったことがひとつ解消した。加藤典洋の『9条入門』を読んでいて、イタリアの憲法の「戦争放棄」という部分に言及した箇所を読んで、ぼくは、ああそういうことだったのかと膝をうった。「同じ敗戦国であるドイツとイタリアの憲法にはあった《相…

イン・ジ・エンド(ザ・クランベリーズ)訳してみた

来週の26日にザ・クランベリーズの最後のアルバム『イン・ジ・エンド』が発売になる。ドローレスが亡くなったのは昨年のはじめ(2018年1月15日)。英語版の Wikipedia によると、このアルバムに収録されている彼女の歌声は、2017年の3月ごろから書かれ、少し…

タヴィアーニ兄弟の未公開作品 『Il prato(草原)』 について

ドイツ語版のDVDが届いたので、タヴィアーニ兄弟の「Il prato (草原)」(1979)を見る。『パードレ・パドローネ』の成功に続く野心作、日本未公開。音声はドイツ語かイタリア語が選択できるので、イタリア語で鑑賞。 主演は『パードレ・パドローネ』のサヴ…

タヴィアーニ祭り

ここのところタヴィアーニ兄弟の映画をずっと見てきました。そろそろ、まとめにかからないといけないのだけれど、そのまえに、メモを整理しておこうと思います。 1)まずはデビュー作ね。これは最初、フィルマークスにタイトルがなかったんだけど、なぜかイ…

Ultimo の "I tuoi particolari" 訳してみた

サンレモ 2019 の準優勝曲を訳してみた。最近のポップスはほとんど知らないからウルティモ(Ultimo)って最初は曲名だと思ったのだけど芸名なんだね。本名はニッコロー・モリコーニ、1996年のローマ生まれというから、おいおい、ほとんどうちの娘たちと同年…

Mahmood の "Soldi"、訳してみた

今朝のニュースで、サンレモ音楽祭 2019 の優勝曲が "Soldi"だと知る。歌ったのは Alassandro Mahmood (YTの映像を見ると「マムッド」と呼ばれているようだ)で、歌詞は自作とのこと。イタリア版ウィキペディアによれば、母親はサルディニアの人で父親はエ…

人格、あるいはペルソナをめぐって

Il Phersu, Tomba degli Auguri, Necropoli dei Monterozzi, Tarquinia (Wikipedia it.) きっかけはこんなツイートだ。 経験上、言葉が変わると人格は変わる。 https://t.co/SV8wb9zddG — 押場靖志 (@yasujioshiba) February 4, 2019 「言語は思考そのもの」…

映画が産声をあげるところ

2019/1/22@早稲田大隈講堂 映画が産声を上げるところ。そんな場所があるとすれば、たとえば昨日の大隈講堂の上映会もそのひとつなのかもしれない。以下、備忘のために。1本目は『ふたたま』: 冒頭こそ逃してしまったけれど、ぼくには安部公房の短編と思え…

ベルトルッチを追悼するドミニク・サンダ

今朝のツイッターで、こんな記事があると紹介された。見ればレプッブリカ紙の演劇欄に、あのドミニク・サンダがベルトルッチを追悼している。TWのコメントには「すばらしい文章だが、批判がないわけではない。『1900年』の撮られなかったシーンについて彼女…

怪物たちが生まれる時代に...

FBにこんな投稿を見た。 書かれているのはアントニオ・グラムシの言葉。こんな意味だ。 古い世界は死につつある。新しい世界はまだなお現れていない。このたそがれ時に怪物が生まれる。Il vecchio mondo sta morendo. Quello nuovo tarda a comparire. E in …

ジェフ・ベック、こどもたちを思うバラードを訳してみた

最近ハマっている『Loud Hailer』。2016年のアルバムなんだけど、そのなかの一曲 Scared for the childeren がすごくよい。ジミヘンの『エンジェル』を明確に意識した曲だというのだが、そんなことを言われるとよけいにグッときてしまう。 www.youtube.com …

イタリア語スピーチコンテストをめぐって:動物とレプリカントの間で

1 スピーチコンテスト 土曜日は日伊協会主催のイタリア語スピーチコンテストに行ってきました。 今年優勝したのは斎藤紀子さん。スピーチのタイトルは『La Roma che ho ritrovato a Damasco』。 ダマスカスといえばシリアの有名な都市です。けれども、シリ…

M.ベロッキオの B.ベルトルッチ追悼書簡

Bernaldo Bertolucci (1941年3月16日 - 2018年11月26日) ベルトルッチの訃報が入った。77歳。しばらく前から病気に苦しんでいたという。この訃報に触れたマルコ・ベロッキオの公開書簡の言葉が、イタリアのネット記事に載っていたので、紹介したいと思う。…

コンタクトゾーンと認知症

TWでこんな記事をみかけた。ぼくは自分の親父のことを考えてしまった。 bunshun.jp ぼくの親父も、この記事にある「嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)性認知症」と診断された。症状が出たとき最初は驚いた。けれど介護保険の制度を頼り、病院で診断を受けてゆくに…

「世間様」から踏み出すこと:イタリア語の《 proprio 》をめぐって

FBに投稿されたイタリア語のレッスンビデオです。ここでは《proprio》という単語の用法が紹介されています。 «proprio»というイタリア語に苦労している人は多いですよね。ここでは、その形容詞的用法が説明されてます。図式的にその用法をまとめれば次の3つ…

モリコーネ VS タランティーノ?

今月の10日、エンニオ・モリコーネ90歳の誕生日、イタリアのシネファクツ ( CineFacts!)というサイトから、巨匠がタランティーノを「おばか un cretino 」よばわりしたというニュースが配信された。記事はドイツのプレイボーイ誌を元ネタ *1 にしたもので…

Vecchio frack (1955) を訳してみた

ドメニコ・モドゥンニョといえば『ヴォラーレ Nel blu dipinto di blu』(1958)が有名だけど、その前に発表された『ヴェッキオ・フラック Vecchio frack』(1955)に触れる機会があった。なんとなく知ってはいたのだけれど、ちょっとじっくり聞いてみると、…

「結婚演出家」を楽しむために

『Viva!イタリアvol.4』予告編 昨日の日伊協会でのベロッキオの話、備忘のためにざっと概略を。 まずは「結婚演出家」のイタリア語タイトル il regista di matorimoni を解説。regista は確かに「演出家」なんだけど、映画なら「監督」。ついでに matorimoni…

ベロッキオのリアルをめぐって

このところ、ベロッキオについて考えている。3週間後には、少しまとまった話をしなければならないからだ。 www.aigtokyo.or.jp ここでは備忘のために、Filmarks のメモを再掲しておくことにしよう。 1)『母の微笑』 背景には、当時の時代設定(大聖年)と…

映画のリアルとイリュージョン

誰かがマルコ・ベロッキオの映画のことを「幻覚的なリアリズム」と読んで/呼んでいた。 なるほど、そうかもしれない。でも、あれは幻覚なのだろうか。むしろ、ぼくにはとてもリアルなものに見えたのだけど、それを幻覚と言ってしまうのは、すこしばかりイー…

憲法記念日にカフカ

憲法記念日の今日、朝からカフカの『審判』に出てくる寓話、「法の前にて」について考えた。 ポイントは3つ。 1つは、その門が開いてるということ。空いている門に入れないのはそこに門番がいて「今は入れない」という。田舎から来た男はそれを信じて入れ…

クランベリーズの『ゾンビ』を訳してみた

昨日、バンドメンバーからクランベリーズのある曲をやろうという提案があった。ギターを取り出してコードを探っていたのだけど、ぼくはどうしてもこっちの曲が頭から離れない。歌ってみるとシンプルなコードにキーも低め。案外いけるぞ、なんて思いながら歌…

トーテムポールを見上げるゾンビたち

www.youtube.com 映画のことはフィルマークスに書いているのだけど、この作品はまだリストアップされていないので、こちらに。 お題はこの映画。『飢えた侵略者』(2017)。原題は英語タイトルが Ravenous 、フランス語がLes Affamés 。 ゾンビ映画の「再発…