雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

タヴィアーニ祭り

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ここのところタヴィアーニ兄弟の映画をずっと見てきました。そろそろ、まとめにかからないといけないのだけれど、そのまえに、メモを整理しておこうと思います。

 

1)まずはデビュー作ね。これは最初、フィルマークスにタイトルがなかったんだけど、なぜかイタリア語版DVDと原題をあげてもらました。未公開だと思うのですが、どこかで公開されてたのか。ジャン・マリア・ヴォロンテが演じる労働運動家に、これでもかというほど矛盾を抱えさせる演出、それに応えるヴォロンテの演技がよいのよね。

あとは、農地を象徴的に占拠する農民たちのもとに、マフィアの若者がまぎれこんできたときの演出がよい。闇から現れ闇に消える群像劇。すでにタヴィアーニ兄弟らしさが出てる。
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2)次に見たのがこれ。「ああ結婚」って邦題ついてるけど、劇場未公開でテレビ放映ということ。原題は「結婚のアウトローたち」(i fuorilegge del matrimonio)。

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3)これは実質的にタヴィアーニ兄弟のデビュー作で、ふたりだけの監督作品としては最初のものになるわけ。これが実によい。新しい世代とそれまでの世代の葛藤というか、意思疎通の齟齬がテーマにあるのだけれど、それを描く脚本と映像がまたすばらしい。

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 アマゾン jp にも出品されてますね。これです。

 

 

4)これもまたなかなかよいのですよ。アバンギャルドって感じで、時代を感じさせてくれるのだけど、タヴィアーニ兄弟らしさはきっちり出してきている。映画言語的にもすごく進化したんじゃないかな。ジャン・マリア・ヴォロンテとジュリオ・ブロージの共演が見もの。それにルチーア・ボゼーの年増役がまたかっこいいのよね。

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 これね。

Sotto Il Segno Dello Scorpione [Italian Edition]

Sotto Il Segno Dello Scorpione [Italian Edition]

 

 

5)これはフィルマークスにタイトルがなかったので、フェイスブックからのリンク。ジュリオ・ブロージの鬼気迫る演技。原作はトルストイ。でも宗教は抜き。

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 これはスペイン語版しか見当たらない。

 

6)いちおう歴史劇。しかしタヴィアーニ兄弟は、文学もそうだけど、歴史も思いっきり裏切ってしまいます。ガリバルディの赤シャツを、時代を遡ってカルロ・ピサカーネの義勇兵たちに着せてしまう。『聖ミケーレの雄鶏』の帆船の赤い帆だってそうだけど、絵としてはそういう絵がほしかったというのはよくわかる。なにしろ、このピサの兄弟の父親は筋金入りのマッツィーニ主義者で共和主義者であり、その息子の彼らは、共産党も真っ青にするマルクス主義者なのだから。

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7)テレビ映画です。テレビとしてはそこそこできたと、タヴィアーニ兄弟本人も気に入っているみたい。

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復活(上) (新潮文庫)

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8)これはアルメニア系イタリア人作家の『ひばり館』が原作。フィクションでもあり、歴史的な問題を扱う内容だけに、タヴィアーニ兄弟にはぴったりの題材だったのかもしれない。
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 原作の日本語訳です。

ひばり館

ひばり館

 

 
9)これは最高です。タヴィアーニ兄弟みごとに復活!

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10)これも見事。前作がシェークスピアならこちらは兄弟の故郷の作家ボッカッチョのもの。誰がなんといっても傑作です。

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11)兄のヴィットリオは体調がすぐれず、監督にはクレジットされず。映画の構想はもちろんふたりのもの。彼らがファシストを描くのはこれで2度目だけど、そうしなければならない背景には、ふたりが時代に対してもっている強い憤りがある。

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amazon jp にはサントラしか見当たらない。 

Milton, Pt. 2

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 原作はこれね。

Una questione privata

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もちろん、名作の誉れ高い『パードレ・パドローネ』、『サン・ロレンツォの夜』、『グッドモーニング・バビロン』などは忘れられませんが、とりあえずはタヴィアーニ兄弟のフルモグラフィを概観できたかなというところ。

 

それにしても、通してみるとなおのこと、彼らの作品には一貫したスタイルが見えてくる。それをどう言葉すればよいか、これから数日悩むつもり。

その間、風邪さんが治ってくれますように。

追記:
この作品にもようやくキャッチアップ。いやあ、たんなる伝説ではなくて、非常に現代的な問題意識から立ち上がった寓話なんだよね。

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