雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

映画でヴェネツィアを旅してきた

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朝日カルチャー立川の「映画で旅するヴェネツィア」、昨日、無事終了しました。COVID19 騒動のなか、マスクを付けておられる方がほとんどで、しかも遠方から来るはずだった友人が、社命により移動できなくなったとの連絡もあったりもしましたが、比較的多くの方にきていただき、ありがたかったです。

 『旅情』から『ベニスに死す』までを、なんとか駆け足で話しましたが、残念ながら『ベニスで恋して』は触れられず。ここのところヴェネツィアを舞台にした作品を10本以上の見てきましたが、今回あつかった映画は次のとおり。

 1. 『旅情』(1954)

2. 『ツーリング』(2010)

3. 『エヴァの匂い』(1962)

4. 『娼婦ヴェロニカ』(1998)

5 . 『ベニスの商人』(2004)

6. 『夏の嵐』(1954)

7. 『ある女の存在証明』(1982)

8. 『ベニスに死す』(1971)

 ヴェネツィア話としては次のような事項に触れました。

ご存知のヴェネツィアと本島を結ぶ橋ですね。

2. Festa di San Marcoイタリア解放記念日

リベルタ橋の落成式が4月25日だという偶然により、歴史への扉が開いた感じです。ヴェネツィアではこの日、愛する人にバラを一輪贈るのだそうですが、その理由がなんと「ロランの歌」のころまで遡るというのです。

3. Hotel Danieli と Stile moresco

超高級ホテルですが、もともとはヴェネツィアの総督を輩出した名門ダンドロ家の宮廷だったんですね。それから入り口の吹き抜けがムーア風というのが興味深い。まさに海の女王ヴェネツィアの面目躍如という感じ。

4. Santa Maria della Salute と Palazzo ducale

救済のマリアというのは、じつのところペストからの救済のことなのですが、その教区の娘(ヴィルマ・リージ)がウエールズ男(スタンリー・ベイカー)と結婚するのだけど、そこにエヴァという高級娼婦がからんでくる... というのが『エヴァの匂い』なんですね。

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冒頭とラストシーンに、ドゥカーレ宮のアダムとイブと生命の木のレリーフが映し出され、創世記からの引用がナレーションで入るわけです。

こんな感じ。

And the man and the woman were naked together, and were unashamed. (Genesis 2:25)

人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思わなかった。

So he drove out the man; and he placed at the east of the garden of Eden Cherubims, and a flaming sword which turned every way, to keep the way of the tree of life. (Genesis 3:24)

神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせられた。

5. Cortigiana onesta あるいはVeronica Franco のこと

 Eva はきっと現代の高級娼婦 cortigiana なんでしょうね。そう考えるとわかりやすい。けれどもそのもともとは、『娼婦ヴェロニカ』のヴェロニカ・フランコような存在なわけです。

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ちなみにこの cortigiana とは cortigiano(gentiluomo di corte :宮廷貴族) の女性形。これに onesto という形容詞がついていますが、それは現在の「誠実な」という意味ではなくて、たぶんにダンテ的な「外見と行動の高貴さ (nobile nell’aspetto esteriore e del portamento )」ということのはず。onesto に対応する語は gentile です。この gentile は現代語で「親切な」という意味ですが、本来は「魂と高貴さ、あるいは精神的な高貴さ (nobile d’animo, nobile in senso spirituale)」のことです。

6. Ponte delle tette あるいは「Carampana」の公娼

7. Cannaregio あるいはユダヤ人地区

8. Campo から Serena repubblica へ

9. ヴェネツィア総督(Doge) Andrea Gritti と Hotel Gritti

10. リドと Hotel des Bains

実は映画にからめて、ヴェネツィアに独特の信徒会(Grande scuola, Piccola scuola)のことや、絵画のヴェネツィア学派のこと、さらにはビエンナーレヴェネツィア映画祭のことなども話したかったのですが、残念ながら今回は時間切れ。

 映画作品もキオッジャを舞台にした『ある海辺の詩人』やヴェネツィアとパリが交錯する『アンナ・オズ』、ウッディ・アレンのミュージカルの『世界中がアイ・ラブ・ユー』など、実にさまざまあるのですが、それについてはまた次の機会に。

  

今回参考になったのは陣内先生のこの本。

 

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