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雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

スマートフォン?

もろもろ
 今朝の「とくダネ」でスマートフォンの弊害を取り上げていた。いわゆる生活情報のコーナでのたわいもない話なのだが、おもわず見てしまった。
 弊害の1つが「ストレートネック」。スマートフォンを長時間使用することで、背骨の首を支える部分から湾曲がなくなり、直線上になる症状だそうだ。こうなると頭をうまく支えられなくなり、肩こりや頭痛がするようになるそうだ。たしかに、電車のなかではみんな首を倒し込んでスマホを触り続けているよな。肩こってそうだ。
 もうひとつは「スマホ指」。なんでも、多くの人はスマホを小指で支えるようにして操作するらしいのだが、あまりに長期間続けているとスマホの重さで小指が変形するそうな。結果、テキストの入力時に痛みを感じたりするという(そういえばぼくは昔、マウスで手首が痛くなったことがある。それでトラックボールに代えた)。
 でもぼくが気になったのは、テレビに映っていたのが iPhone だったこと。そして、それを当たり前のようにスマホと呼んでいたこと。今やそんな時代なんだと思う。
 * * * 
 それにしても、スマホという言葉はいつのころからあたりまえになったのだろう。
 かつてPDA(Personal data assistace) なんて言葉があった。アップルのニュートンという携帯情報端末(1993年)なんかがこれで、モバイル・コンピュータの走り。ぼくも興味を持った覚えがあるけど、市場では売れなかったみたい。結局は普通の手帳の利便性をまだ越えることができなかったのだ。けれども、やがてこのPDA機能(カレンダー、メール、メモ管理などのデータ端末機能)が携帯電話(音声通信機能)に取り込まれてゆき、スマートフォンへ、つまり「かしこい携帯電話」への流れができてゆく。
 その意味では日本の高機能携帯だって「かしこい携帯電話」だった。1999年に開始された「iモード」のサービスなんて、少し前まで誰もが自慢げに使っていたのを覚えている。「あれもできるし、これもできるし、賢いのよね、この携帯」なんてね。ドコモにしても、このサービスで世界進出を目論んでいたみたいだけど、結局は失敗。そりゃそうだろうと思う。あれって有料サービスだからね。「いったいこの通信でいくらお金がかかの?」と思えば、誰だって二の足を踏む。ぼくなんて貧乏だから怖くて手を出せなかった。別に使わなくても、生活に困ることもなかったし、そもそもまだ携帯なんて持っていなかったし。
 スマートフォン、あるいはスマホという言葉が日本で定着するのは、 iPhone の成功を待たなければならない(アメリカでは2007年、日本では2008年に販売開始)。この成功に続けとばかり市場に投入されたiPhoneタイプの端末がスマートフォンと呼ばれ、やがてスマホとして定着してゆく。だから、ぼくの語感からするとiPhoneiPhoneであり、スマートフォンは「iPhoneもどき」端末のこと。まるでアップル信者みたいだけど、もろもろの事情でアップルの製品を使い続けて来たのだから仕方がないのですよ。
 このスマホという言葉の定着と軌を一にして出て来た言葉がガラケーだ。娘なんかに言わせると、二つ折りにするような古いタイプの携帯のこと。いつまでも「そんなガラケーを使ってないで、早くスマホにしたら」というような使い方をする。そんなガラケーという言葉が広がってゆくとき、おそらくは日本の携帯市場でのビジネスモデルが黄昏を迎えていたのだ。気がつけば携帯のメーカーのトップブランドにも、ネットビジネスにも日本のビッグネームが消えている。TwitterもそうだしLINEもそうだ。LINEなんて、国産初の成功したネットビジネスなのかと思ってたら(実際、どこかのTVニュースでそう言ってたぞ!)、親会社は韓国最大のネットサービス会社NHNの日本子会で作られたものなのね。ついでに土屋アンナが宣伝しているカカオトークも韓国発のスマートフォンアプリだそうです。2度びっくり。
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 というわけで今やスマホの時代(ぼくの感覚では iPhoneiPhone もどきの時代)。小指が曲がるのがスマホ指(首から湾曲がなくなるのはスマホ首?)なら、スマホという言葉がなければ iPhone 指とか iPhone首と呼ばれていたかもしれない。だとすればアップルは怒っただろうな。スマホという言葉があってよかったね、アップルさん。
 でも、実際に自分の小指がiPhoneの使い過ぎで曲がったら、「俺ってさ、iPhone指なんだ」なんて言ってしまうのだろうな。しかも、「それってスマホ指だろ?」って言われたら、「いや、おれば場合はiPhone指なんだ!」と言い張ったりして。きっとiPhoneが大好きなユーザーなら指の変形だって自慢なのだと思う。
 実際、人間の身体は技術にあわせて歪曲してゆく。昔は「ペンだこ」なんてあったし、柔道の選手は耳がつぶれている。誰もそれを恥ずかしいとは思わない。織り込み済みのこととして、そんな身体的変形を(多少の痛みとともに)受け入れる。その痛みや変形のような損失を帳消しにするような利得があるからだ。たとえiPhone指やiPhone首になろうとも Twitter や Line はやめられない。指や首の多少の痛さはもはや織り込み済みなのだ。たとえもっと重大な病気につながると言われても、スモーカーと同じで、やめるのはとてもむつかしい(だってウマイのだから)。
 だから iPhone から始まるスマホのコミュニケーション革新が後戻りできない理由は明らかだ。そこには損失を越える利得がある。弊害が明らかになれば、それを織り込んで損失を最小にしながら前に進むしかない。すでに手にした利得を人が手放すことは難しい。もし手放すとすれば、その損失を補ってあまりある新たな利得が提示されるときなのかもしれない。
 個人的にいえば、ぼくは iPhone を使っていない。授業には MacBook を持ち歩いているし、携帯電話はずっとPHS(今やガラケーと呼ばれるタイプ)。だってメールはもっぱら家族との連絡、それも2文字を選ぶだけのものが普通(「い」と打てば「今から」、「か」で「帰る」)。これは便利。車の故障や事故のときも助かる(実際、助かったことが何度かある)。だから車ででかけるときは免許とケータイが欠かせない。そういえば携帯電話なるものを買おうと思ったのは 9・11(2001年)がきっかけだった。それまではなくてもなんとかると思っていたのだが、実際あのビルに取り残された人が携帯で家族と最後の連絡を取った話を聞いたとき、ショックを受けた。これは買わなきゃとばかり、すぐにDDIポケット(今のウィルコム)の店に走った。そのころから安かったのでPHSにしたのだけど、おかげで3・11のときには、家族の全員とすぐに連絡が取れた。他の携帯の人は大変だったみたいだけど。
 いずれにせよ、すでに携帯を使っているぼくとしては、もはや携帯のない時代にはもどれない。だからといって、いわゆる「スマホ指」になって「ストレートネック」になってしまうようなスマホの時代に入ろうという気持ちは湧いてこない。だって、そんなに若くはないもの。
 そんなスマホはどうでもよい(と今は思っているのだ)が、 iPhone に興味がないわけではない。Evernote が使えるからね。ここのところ MacBookで愛用しているソフトだけど、ノートとしてもよくできているし、クラウドで同期するのがこんなに便利なのかと感心している。もうひとつは辞書の存在。最近 App Store で Zingarelli (イタリア語辞書)を購入した。以前から iPhone では使えていたもので、欲しいと思っていたものだ。これは便利ですよ。授業中に気になる単語があればすぐに検索、その場でいろいろな発見がある。紙媒体の辞書だとこうはゆかない。もちろん腰を据えたテキストワークが大事なときもあるけれど、やはりスピードはいいね。だいたい気持ちがよい。
 そんな辞書や Evernote を入れて、もちろんGoogle Map なども使えるようになるとすれば、これはなかなか魅力的なPDAではないか。ちょっとしたプレゼンなら簡易版 Keynote や Pages が使えるし、教科書だってPDFに落とせば何冊だって楽勝で持ち運べる(実際、そうやってぼくに見せびらかす同僚がいる)。車にはカーナビがないけど、iPhoneがあればカーナビ代わりになるし、なによりも軽いし…
 気がつくと損失と利得を一生懸命に秤にかけているぼくがいる。けれどもそんな損得計算は、あくまでも買ったときのいい訳だなのだ。実際は、マルクスも言っているように、商品を買う行為には「命がけの飛躍」がともなう。人が最終的にものを買うのは得になるからなのではない。得かどうかわからないけれど、「エイヤッ!」と飛躍するように商品を買うものなのだ、とくに新しいジャンルの製品の場合には。
 ではなぜ飛べずにいるのか?もう若くないから?
 じつはiPhoneは無理でも、iPad mini や iPod touch ならの買えるかなと思って、何度も店頭に足を運んでいる。ただどうしても、あのタッチパネルがしっくりこないのだ。何度も触っても、どうも感覚があわない。何かが少しずれる。たしかにアップルの秀逸なインタフェースは、物理的な感覚にどこまでも近く作り上げられている。それなりに楽しい。けれどやはり何かが少しずれるのだ。この少しのずれが、ぼくをなお飛躍から遠ざけている…。
 うう、でも飛びたい。 
 
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