雲の中の散歩のように

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キング・クリムゾン「Music is our friend」 東京国際フォーラムAホール2日目、11/28(日曜日)、短評

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二日目。昨日買えなかったパーカーを買う。ホンジュラス製。サイズピッタリ。7500円は安くはないけど大満足。うえの娘も、インターミッションのときに自分用のTシャツを買いに走る。最初は買わなくてもよいとか言っていたんだけど、前半のプレイをみて震えたみたいで、やっぱり買うと言って走って行った。

クリムゾンのコンサート、女子トイレがガラガラで男子トイレがコミコミ。まあそういうことなんだけど、女子がクリムゾンを嫌いというわけではなく、そこはグラデーション。娘は、たしかにマスキリンな高揚感を感じたとは言っていたけれど、そんなの女性だからわからないなんてことはあり得ない。ちなみに、ぼくの前の席のお嬢さんなんて、クリムゾンのプレイにこちらが感動するほどの感動を、その背中で示していたもんね。男とか女とかじゃないんだよ。よいものはよい。それでいいじゃないか。

ちなみに、フェミニンな高揚感を感じるアーティストは誰かなのか。ぼくがチャットモンチーとか中島みゆきというと、そうじゃなくてと娘。じゃあ誰よ。わからん。宿題にさせてくれ、だってさ。

余談はさておき、今宵の短評。オープニングは例によってドラムトリオ。聴き慣れた「Hell Hounds of Krim」とは違う。昨日聞いた「Drumzilla」でもない。こちらのサイトに行ってみると「Devil Dogs of Tessellation Row」というらしい。ググればすぐにこれが出てきたけれど、たしかにこれだった思う。

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オープニングをドラムトリオ。そこから今日は昨日の後半の楽曲へと引き継いでゆく。まずは「Neurotico」。1982年のアルバム『ビート』より。昨日も良かったけれど、今日はレベルがもう一段アップ。

 

そこから1974年のアルバムタイトル曲「Red」の2021年ヴァージョン。どんどん盛り上がる。

畳みかけてるように「Epitaph」。イントロがかかるだけで震えがくる。1969年のデビュー作「宮殿」からの楽曲。

続いて「One more red nightmare」。これもアルバム「Red」からで、A面のラストの曲。このアルバムはウェトン、ブリュフォード、フリップの3人構成なんだけど、こんなに豊かな演奏に発展するとは。いはやは。恐れ入ります。

続いて今宵はこの曲が聴けるのかと感動。「Peace - An End」

そこから「Larks' Tongues in Aspic, Part Two」が始まった時は感動ものだったけど、いかんせん、途中で少しバランスが悪くなる。最高の演奏とまではいかなかったけど、最後はきちんとまとめてくる。この曲、人生で初めて音楽に震えるような感動を味あわせてもらった曲。それをこの構成で聴けるなんて幸せがあるだろうか。

もりあがったところで、トニー・レヴィンのベースが響く。「Tony's Cadenza」は一服の清涼。そこから「Moonchild」ときた。ファーストアルバムB面の冒頭の名曲。おもわず叫んじゃった。「Call her moonchild /  Dancing in the shallows of a river / Lovely moonchild / Dreaming in the shadow / Of the willow.」思わず一緒に歌っちゃったぜ。

そこからは「Radical Action II」から「Level Five」へと定番の盛り上がり。昨日は後半だったけど、今日は前半の最後。

インターミッションは15分。つづいて第二部。オープニングは昨日と同じ「Drumzilla」。今日のほうが明らかに出来が良い。

そこから「The ConstruKction of Light」。2000年のアルバムタイトル曲。めちゃくちゃテクニカルで、大好きな楽曲。

そんなうれしい選択につづいて「Peace - An End」の続き。そこからセカンドアルバム『ポセイドンのめざめ』(1970)から昨日もやった「Pictures of a City」。これも名曲。

さらに1971年の『Islands』からタイトル曲「Islands」。オリジナルはボズ・バレル(1946 - 2006)の甘い歌声を、ジャッコ・ジャクジクが見事に再現。いや、それ以上のジャッコー節に仕上げている。うちの奥さんが聞いて「この声涙がでちゃう」と言っていたけど、たしかに琴線を震わせる美声なんだよね。ボズもジャッコーも。

今調べてみて気がついたんだけど、このアルバム「アイランズ」って「島」(アイランド)の複数形なんだよね。だから「島々」(アイランズ)。作詞家のピート・シンフィールドはなんでもホメロスの『オデッセイヤ』から着想を得たという。そうだったのか。今頃気がついた。こんど、歌詞をしっかり読んでみよう。

そろそろ、ラストに近づいてきた。静かな「アイランズ』につづいて「The Court of the Crimson King」。イントロがかかると娘が耳打ちしてくる。「これ知ってる!」。そりゃそうだ。うちで何度もかけたからな。

第二部の締めは「Indiscipline」。昨夜もやったけど、ドラムトリオのアンサンブルの見事さとトニー・レヴィンのスティックとフリップ翁の弦楽器のセクションとのコール&リスポンス的なやりとりが最高にかっこいい。そして最後のしめは、「I like it」で終わる歌詞を、ジャッコが日本版に「いいねー」とやって決めてくる。

アンコールは名盤『Red』のラストを飾る「Starless」。感涙ものの名曲。昨日はジャッコーのギターがボロボロだったけど、今日はそこそこ。でも昨日の挽回はできたかな。おしむらくはジェレミー・ステーシーがミスっちゃった。メル・コリンズのソロを受けるべくハイハットのリズムを刻まなきゃならなかったのに、空白を作っちゃタンだよね。ホットして油断したのかね。まあ、それでもきちんとあわせてくるのがKC。決して止まったりはしない。何事もなかったかのように最最後まで演奏しきってくれました。

今宵のお客さんは「21世紀のスキッソイドマン」が聞けなくて残念だけど、それはそれ。今宵のほうがレベルは高かった。でも、たぶんこれからさらに上がってくるはず。

とはいうものの、ぼくのクリムゾンはここでおしまい。今回はほんとに最後とかいわれているけれど、きっとフィリップ翁も気が変わって、近いうちにまた帰ってきてくれると信じて、また会いましょう。

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