雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

イタリア語

タヴィアーニ兄弟の未公開作品 『Il prato(草原)』 について

ドイツ語版のDVDが届いたので、タヴィアーニ兄弟の「Il prato (草原)」(1979)を見る。『パードレ・パドローネ』の成功に続く野心作、日本未公開。音声はドイツ語かイタリア語が選択できるので、イタリア語で鑑賞。 主演は『パードレ・パドローネ』のサヴ…

タヴィアーニ祭り

ここのところタヴィアーニ兄弟の映画をずっと見てきました。そろそろ、まとめにかからないといけないのだけれど、そのまえに、メモを整理しておこうと思います。 1)まずはデビュー作ね。これは最初、フィルマークスにタイトルがなかったんだけど、なぜかイ…

Ultimo の "I tuoi particolari" 訳してみた

サンレモ 2019 の準優勝曲を訳してみた。最近のポップスはほとんど知らないからウルティモ(Ultimo)って最初は曲名だと思ったのだけど芸名なんだね。本名はニッコロー・モリコーニ、1996年のローマ生まれというから、おいおい、ほとんどうちの娘たちと同年…

Mahmood の "Soldi"、訳してみた

今朝のニュースで、サンレモ音楽祭 2019 の優勝曲が "Soldi"だと知る。歌ったのは Alassandro Mahmood (YTの映像を見ると「マムッド」と呼ばれているようだ)で、歌詞は自作とのこと。イタリア版ウィキペディアによれば、母親はサルディニアの人で父親はエ…

ベルトルッチを追悼するドミニク・サンダ

今朝のツイッターで、こんな記事があると紹介された。見ればレプッブリカ紙の演劇欄に、あのドミニク・サンダがベルトルッチを追悼している。TWのコメントには「すばらしい文章だが、批判がないわけではない。『1900年』の撮られなかったシーンについて彼女…

怪物たちが生まれる時代に...

FBにこんな投稿を見た。 書かれているのはアントニオ・グラムシの言葉。こんな意味だ。 古い世界は死につつある。新しい世界はまだなお現れていない。このたそがれ時に怪物が生まれる。Il vecchio mondo sta morendo. Quello nuovo tarda a comparire. E in …

イタリア語スピーチコンテストをめぐって:動物とレプリカントの間で

1 スピーチコンテスト 土曜日は日伊協会主催のイタリア語スピーチコンテストに行ってきました。 今年優勝したのは斎藤紀子さん。スピーチのタイトルは『La Roma che ho ritrovato a Damasco』。 ダマスカスといえばシリアの有名な都市です。けれども、シリ…

M.ベロッキオの B.ベルトルッチ追悼書簡

Bernaldo Bertolucci (1941年3月16日 - 2018年11月26日) ベルトルッチの訃報が入った。77歳。しばらく前から病気に苦しんでいたという。この訃報に触れたマルコ・ベロッキオの公開書簡の言葉が、イタリアのネット記事に載っていたので、紹介したいと思う。…

「世間様」から踏み出すこと:イタリア語の《 proprio 》をめぐって

FBに投稿されたイタリア語のレッスンビデオです。ここでは《proprio》という単語の用法が紹介されています。 «proprio»というイタリア語に苦労している人は多いですよね。ここでは、その形容詞的用法が説明されてます。図式的にその用法をまとめれば次の3つ…

モリコーネ VS タランティーノ?

今月の10日、エンニオ・モリコーネ90歳の誕生日、イタリアのシネファクツ ( CineFacts!)というサイトから、巨匠がタランティーノを「おばか un cretino 」よばわりしたというニュースが配信された。記事はドイツのプレイボーイ誌を元ネタ *1 にしたもので…

Vecchio frack (1955) を訳してみた

ドメニコ・モドゥンニョといえば『ヴォラーレ Nel blu dipinto di blu』(1958)が有名だけど、その前に発表された『ヴェッキオ・フラック Vecchio frack』(1955)に触れる機会があった。なんとなく知ってはいたのだけれど、ちょっとじっくり聞いてみると、…

「結婚演出家」を楽しむために

『Viva!イタリアvol.4』予告編 昨日の日伊協会でのベロッキオの話、備忘のためにざっと概略を。 まずは「結婚演出家」のイタリア語タイトル il regista di matorimoni を解説。regista は確かに「演出家」なんだけど、映画なら「監督」。ついでに matorimoni…

ベロッキオのリアルをめぐって

このところ、ベロッキオについて考えている。3週間後には、少しまとまった話をしなければならないからだ。 www.aigtokyo.or.jp ここでは備忘のために、Filmarks のメモを再掲しておくことにしよう。 1)『母の微笑』 背景には、当時の時代設定(大聖年)と…

映画のリアルとイリュージョン

誰かがマルコ・ベロッキオの映画のことを「幻覚的なリアリズム」と読んで/呼んでいた。 なるほど、そうかもしれない。でも、あれは幻覚なのだろうか。むしろ、ぼくにはとてもリアルなものに見えたのだけど、それを幻覚と言ってしまうのは、すこしばかりイー…

憲法記念日にカフカ

憲法記念日の今日、朝からカフカの『審判』に出てくる寓話、「法の前にて」について考えた。 ポイントは3つ。 1つは、その門が開いてるということ。空いている門に入れないのはそこに門番がいて「今は入れない」という。田舎から来た男はそれを信じて入れ…

プロフェッソーレとマエストロ

Retweeted 中田考 (@HASSANKONAKATA): 大学の教員は、小中高の教師とは根本的に違います。大学では教員が教えるのではなく、学生が学ぶのです。少なくとも私が大学生の時はそれが大学というとものだ、ということには学生と教員の間に広範な合意があったと思…

ジョヴァノッティのアモーレ、ダンテのアモーレ

www.youtube.com ジョヴァノッティを知ったのはたぶんこの曲だったと思う。NHKのテレビイタリア語が始まったのは1990年だけど、この曲はその4年後に発表されている。たしか、ちょうどそのころ出演しはじめたダニオ・ポニッシさんが番組のなかで紹介して…

ジェルソミーナとローザ、あるいは『道』の反復をめぐって

授業でやってる『道』の冒頭のシーンの続き。 ここでのダイアローグなんだけど、ポイントはやはりローザの存在。 近所の女性がジェルソミーナに近づいて来て言う。 - Te ne vai, Gelsomina? (行くのかい、ジェルソミーナ?) そこでジェルソミーナは「Parto…

Una bocca di meno da sfamare... (フェリーニの『道』より)

フェリーにの『道』のセリフだけど、先日、中級の授業で質問が出た箇所がこれ。 T'impara un mestiere anche a te e guadagni qualcosa anche te e qui in casa è una bocca di meno da sfamare...(Dalla battuta di Madre, "La strada" in IL PRIMO FELLINI…

ジョヴァノッティの新曲 "Oh, Vita!" 、訳してみた

ジョヴァノッティのニューアルバムを聞いた。その一曲目、リズムが気に入った。歌詞も悪くない。むしろ、その嫌味のない若々しさが心地よい。 1966年生まれで今年51歳になったジョヴァノッティ。若造(ジョヴァノット)ではない。けれども、ここには50代…

あらゆる終わりを超えて響き渡る「叫び」

先日、横浜の朝日カルチャーセンターで『テオレマ』について話してきました。しかも「名作の謎と秘密」というシリーズだったのですが、いやはや、さすがにパゾリーニは簡単ではありません。語りきれなかったことや、まだまだわからない疑問も含めて、これか…

「似る」こと:「親和力」と「深くて暗い川」

この日曜日、どうしてだか「親和力」のことを考えることになったのは、この記事が始まりだった。 cakes.mu ここで東浩紀はこんなことを言っている。 人間はそもそも、言葉だけではなく、服装や振る舞いや声の高さ低さや、じつに多様なチャンネルからの情報を…

母の日の翌日、パゾリーニを訳してみた

www.youtube.com 昨日はずっと「親和力」のことを考えていた。母の日だったのだ。だから、今朝、一日遅れのイタリアからパゾリーニの詩が届いたのだけど、それはまさに「親和力」についての詩だと気がついた。タイトルは「母への懇願 Supplica a mia madre …

憲法改正国民投票の敗北を受けてマッテオ・レンツィの演説(ちょっと訳してみた)

国民投票での敗北を受け、レンツィ首相が辞任しました。ちょっとした驚きです。ほんとうに辞任するかどうか、みんな半信半疑だったわけですが、ある意味で潔く身を引いたわけです。 これからどうなるのか。ヨーロッパの先行きが見えなくなってきたわけですが…

パオロ・コンテの Chiamami adesso を訳してみた

FBで大好きなパオロ・コンテの歌詞の一節が流れてきた。知っている歌の一節だったから、すぐに頭のなかであのしわがれ声が響いた。それで、どういうわけか思ったんだ。あっ、これは今、この僕に向けられた言葉なのかもしれないってね。そのイタリア語がこれ…

ダッカ・テロ事件についてイタリア大統領のコメント(日本語訳)

ダッカのテロ事件を受けて、メキシコシティを訪れていたイタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領の緊急コメントです。こういうときのコメントは大変難しいのですが、大統領は落ち着いた話しぶりで、言葉を選んでいると思います。イタリア語の勉強もかねて、…

英国のEU離脱をめぐる R. Saviano の記事を訳してみた

英国のEU離脱をめぐって、いろいろな人がいろいろなことを言っている。ぼくの周りでも、、悲しんだり怒ったりする人がいるし、なんとか結果を受け止めようと考えている人もいる。かとおもえば、中東の事情を考えれば、国境線が変わるなんてあたりまえで、…

ヴィスコンティ『Cadaveri』(1941)を訳してみた

今年の朝日カルチャーセンター(横浜)のイタリア映画講座は、ルキノ・ヴィスコンティについて話している。昨日はその第2回目だったのだけど、いつもにまして多くの受講者がこられてうれしい限り。さすがにフェリーニよりも人気がありますねと言われると、…

ベルギーのテロをめぐって:ジグムント・バウマンへのインタビュー

ヴェネツィアの友人がFBに投稿していた記事が興味深い。イタリアのコッリエーレ・デッラ・セーラ紙のサイトに掲載されたインタビューなのだが、そのページがこれ。 www.corriere.it インタビューに答えているのはジグムント・バウマン(Zygmunt Bauman、1925…

祝、エンニオ・モリコーネ。初のオスカー獲得!

エンニオ・モリコーネがついにオスカー受賞した。 2007年にはすでに功労賞をもらっている。ふつうなら功労賞はキャリアの最後にもらうもの。ところがモリコーネは「これが出発点だよ」とコメントしていた。そして、今、おん年87歳にして、新作をもっての堂々…