雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

99 posse 『コミュニストのツイスト』訳してみた

FBに投稿されていた 99 Posse の "Comuntwist" という曲のPVを見る。2000年のアルバム Vida Que Vendra からの曲だけど、その歌詞を聞きながら、なんだか今のぼくたちの姿が歌われているようで、思わず日本語に訳してみた。

 

とりあえず、これがPVね。


99 Posse - Comuntwist - YouTube

 

ね、なんとも味わいのある映像だと思うのだけど、そのメッセージは強烈なんだよな。時代遅れのコミュニストというイメージは、バンドのメンバーにとっての父親たちのことなんだけど、親の世代が壁の崩壊以降、腰砕けになっているなかで、自分は時代遅れのコミュニストなんだ、だからツイストなんていう時代遅れの踊りを踊るんだという、メッセージなわけね。

以下は日本語訳。

コミュニストのツイスト』
 
パパがまだ若かったころ
誠実で敬虔な人々はだれも
パパとは話したがらず
嫌がって遠巻きにしてた
パパはでも不細工だったわけじゃない
派手なブルジョワにまじって勉強してたけど
連中にとってはコレラみたいなもの
だってパパはコミュニストを公言してたからね
もう30年以上もたったけど
今でもまだ無一文だけど
もうコミュニストじゃない
だって流行でもトレンドでもないからね
でもトレンドはメディアが作り
やおいらたちみんなブルジョワ
それもちょっとマゾの入ったブルジョワ
月末に札束で叩かれることが好きなんだからね
 
おいらはコミュニスト まったく流行じゃないね
あたいはコミュニスト あんたらに票は入れない
あまりに流行じゃなく あまりにコミュニストだから
踊るのはツイストなのさ!
 
もう60歳になるあんた
年金暮らしとゆきたいところだけど
シックな自殺でも考えるんだね
ついでにインフレも捨てちまいな
それにさフレキシビリティーってものがあるわけ
あたらしい流行さ、みんな知ってるけどね
おいらたちはさ、みんな2つに分けられるわけ
飢えて死ぬやつとヨーロッパに行くやつよ
具合がわるけりゃトレンドに注意すんだな
まさか病院に行くんじゃないだろね
会社に負担かけるわけにはゆかないぜ
そんなことすりゃ、ほんとに具合がわるくなっちまう
もし失業者をやるのがトレンドでないなら
小企業家のほうがましってわけ
IVA(付加価値税)の登録番号もらって Wind の携帯を片手に
エレベーターに乗る小銭さえないありさまだ
 
おいらはコミュニスト まったく流行じゃないね
あたいはコミュニスト あんたらに票は入れない
あまりに流行じゃなく あまりにコミュニストだから
踊るのはツイストなのさ! 
 
1962年とか1963年あたり
パパにはちょっと希望があったのね
「おれたちには変えられるぞ
 みんなで体制を打ち倒そう」
でも今目が向けられているトレンドは
魔法のようなグローバリゼーションが最新だってさ
おれたちはもう ただ犬畜生というだけじゃない
絶滅危惧種でもあるわけさ
どいういうわけかといえば、あの同志マルクス
まだまだなんとか頑張っていたころ
人民の敵といえば
主人と資本だったのに
そんな話は今や通らない
社会主義国家は終わっちまい
人民の敵といえば
自分よりも貧しい奴ら、それが永遠と続いてるんだ
 

最後のフレーズは強烈だよね。人民の敵は、もやは主人や資本ではなく人民自身、それも自分よりも貧しい者たちが敵となっているのが、グローバリゼーションの時代の階級闘争だというわけ。でも、そんなのはもはや階級闘争ではなくて、1%の富裕層と99%の貧困層に区分されたあと、その99%の人民が、自分よりも貧しい者と敵対しているという、なんだか地獄図のような世界。

おそらく、PVの最後に登場する赤ん坊は、ぼくたちの未来を象徴しているんだろうけど、その未来=赤ん坊は、コミュニストの食卓の乗せられて、その周りを囲む腹を減らした同志たちが、ニコニコしながら今にも貪り食おうとしているようではないだろうか。

そう、グローバリゼーションの時代にあって、人民は未来を貪り喰っているというわけ。だから、絶滅危惧種なんだよね。けれども、人民が絶滅したところに生き残る者はいないよね。1%の富裕層だって、残りの99%がいなくなれば、生きてゆけない。市場主義にしても、99%の消費者がいなくなれば成り立たない。

99 posse のそんな黙示録的なメッセージ。少なくともぼくには、今ますます、現実味を帯びてきているような気がすけど、どうだろうか。

 

 イタリア語の原文はこちらね:

COMUNTWIST*1
(A: L. Persico, M. Di Donna, D. Jacobelli - C: M. Messina, M. Iovine, S. Ricci)

Quando era piccolino papà
tutta la gente onesta e timorata
con lui nun ce vuleva parlà
e se ne allontanava skifata*2
Papà non era brutto però
studiava tra i borghesi più in vista
pe lloro era ’o culera pecché
papà era un convinto comunista
Sono passati trent’anni e più
e oggi pure un nullatenente
non é più comunista perché
non è di moda, non è più trend
Ma il trend l’informazione lo fa
e siamo tutti quanti borghesi
borghesi un poco maso*3 pecché
ce piace ’e abbuscà â fine r’ ’o mese*4

Sono comunista totalmente fuori moda
sono comunista che per questo non vi vota
talmente fuori moda e talmente comunista
CHE BALLO IL TWIST!

Si tiene sissant’anne e tu mo
te ne vorresti andare in pensione
inventati un suicidio chic
e butta giù anche tu l’inflazione
E poi c’é la flessibilità
la nuova moda a tutti ormai nota
che ci divide tutti a metà
chi more ’e famme e chi va in Europa
Se non ti senti bene occhio al trend
non andrai mica all’ospedale
a gravare ncopp’ê spalle ’e ll’azienda
allora overo tu te vuò fa male
Si sì disoccupato NO TREND
meglio piccolo imprenditore
con partitina iva e Go Wind*5
e mmanco ’e ssorde pe ll’ascensore*6

RIT

Negli anni ’ssantadue ’ssantatré
papà qualche speranza l’aveva
diceva: “nuie putimmo cagnà
insieme abbatteremo il sistema”
Guardiamo invece all’ultimo trend
la magica globalizzazione
non solo simmo bestie fetenti
ma simmo pure in via d’estinzione
Quando il vecchio compagno Marx
si portava ancora non male
il nemico del popolo era
il padrone ed il capitale,
ma adesso che non va più
e lo stato sociale è finito
il nemico del povero è
il più povero e così all’infinito

RIT

歌詞はバンドのオフィシャルHPから: 

http://www.novenove.it/index.php?sz=testo#brano_50

 

La Vida Que Vendra

La Vida Que Vendra

 

 

*1: comunistaと twist の合成語

*2:schifata

*3:maso=masochista

*4:=ci piace di abbuscare al fine del mese. abbuscare はスペイン語からの動詞で「叩かれる」とか abbuscare lo stipendio 「給料をもらう」の意。ここでは両方の意味がかけられているのだろう

*5:携帯会社の Wind のことと思われる。Go Wind は「(携帯は Wind にしょう」ということなのだろう 

*6:ナポリではアパートのエレベーターを使うのに小銭が求められることがあるという。その額は微々たるものだが、ここでは、そんな端金さえ持てなくなるという皮肉の意