雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

Totò 『女性』あるいは美しすぎる存在に捧げる詩

Antonio De Curtis, in arte Totò (1898-1967) 昨日11月25日は、「女性に対する暴力撤廃の国際デー」だった。例によってFBにはいくつかの投稿があったのだけど、なかでもぼくの目を引いたのはイタリアを代表する喜劇役者トト(アントニオ・デ・クルティ…

Erri De Luca 『世俗の祈り』

またFBで素晴らしい詩にめぐりあった。地中海の難民たちのことを詠った詩なのだけれど、神ではなく海にむかっての祈りとして書かれたものだ。だからそのタイトルは「世俗の詩」。ランペドゥーサ沖の悲劇のことや、その悲劇を先取りした映画「海と大陸」のこ…

99 posse 『コミュニストのツイスト』訳してみた

FBに投稿されていた 99 Posse の "Comuntwist" という曲のPVを見る。2000年のアルバム Vida Que Vendra からの曲だけど、その歌詞を聞きながら、なんだか今のぼくたちの姿が歌われているようで、思わず日本語に訳してみた。 とりあえず、これがPVね。 99 Pos…

Led Zeppelin "Rock and Roll" のドラムイントロ!

Led Zeppelin - Rock And Roll Live 1973 [1080p ... ツェッペリンの名曲、今度スタジオで挑戦してみようということになった。一聴して簡単なロックンロールに思えるのだけど、これが実に難物。とてもデッドコピーは無理そうなんだけど、せめて雰囲気ぐらい…

パオロ・ヴィルツィー『見わたすかぎり人生』(2008)

雑誌 Musicavita Italia のためのコラムの草稿ができた。塩漬けして明日には送付の予定。で、前回の記事で、そこに挙げたおいたヴィスコンティの論文は、このコラムのための準備だと書いていたのだけど、マッテオ・ガッローネの『リアリティー』に絡めて考え…

人間の姿をした映画(ルキノ・ヴィスコンティ)1943

ヴィスコンティは、そのデビュー作『郵便配達は2度ベルを鳴らす』(1942)を発表したのち、映画雑誌チネマに Cinema antropomorfico と題する小論を発表する。まだネオレアリズモという言葉がなかったころ、後にその先駆とされる作品を発表したばかりのヴィ…

スワッグとアッロスティチーノ:あるいはバロテッリの開くイタリア

FBで紹介されたのだけど、なかなか興味深い記事だったので、ちょっと紹介してみたい。記事はこれ: 生贄の黒人が経験していることメディアから袋だたきにされるバロテッリだが、彼の国であるイタリアは「Swag」や「羊の串焼き」という言葉をとうてい理解でき…

バラとジャスミン:フェリーニ『道』(1954)

最近ちょっとした出会いがあって、忘れかけていた映画を語る歓びを思い出すことができました。せっかくだからここに、少し自分の書いて来たものをふりかえってみようと思います。あちらこちらに書き散らしたコラムを、少しずつアップしてゆくことにします。 …

99 posse『撃て』 (1996)

Spara 99 Posse - YouTube 機会があって99ポッセの「Spara」を聴き直した… なんというアクチュアリティ! もちろん音楽も悪くないのだけれど、やはり圧倒的なのはその歌詞。 いかに世界が今、W杯の話題で麻痺しているかが痛感させられる。 クリミア情勢は…

原初的逸脱…

Twitterで寺山修司のこんな言葉に目にする。 人間の条件は、つねに本質よりもさきに「生」そのものがあるのであって「はじめにことばありき」ではなく「はじめに声ありき」だったのである。 「はじめにことばありき」とは聖書の言葉だが、そこに寺山は「本質…

おお、アメリカ!『ゾンビランド』にゾワっとする。

なるほどね。 引きこもりのダメ男(ジェシー・アイゼンバーグ)がヒーローになるという話型に、できのあまりよくない主人公を怪力男マチステ顔負けのゾンビキラー(ウディ・ハレルソン)が助けるという古典活劇を組み合わせ、そこに男を食い物にする悪女だけ…

蜷川幸雄『わたしを離さないで』

『わたしを離さないで』 PV - YouTube この連休に、蜷川幸雄の舞台『わたしを離さないで』を観てきた。 原作はカズオ・イシグロの同名小説。原作は読んでいた。映画化された作品も観た。それでも舞台は新鮮だった。ひさしぶりの舞台ということもあったのかも…

レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『デスソング』

Red Hot Chili Peppers - Brendan's Death Song ...今日はよく晴れた心地よい日和なのだけど、なぜか朝からレッド・ホット・チリ・ペッパーズのビデオクリップを見続けている。『ブレンダンのデスソング』と題されたこの曲は、文字通り「死者の歌」であ…

ピーター・ガブリエル『洪水がやって来る』

新学期がはじまりドタバタと2週間がすぎた。 やはり忙しさにかまけているとよくないな。なんだか少し喉が痛い。鼻水が出る。どうやら軽い風邪をひいたみたいだ。 そんなとき目についたのが、FBに投稿されていた懐かしい曲。ピーター・ガブリエルとロバート…

男と女をめぐるイタリア語の悩み…

英語しか学んだことがない学生が、イタリア語に接して最初に驚くのが、名詞に男性名詞と女性名詞があることだ。形容詞や冠詞にもこの性の違いに応じて形を変えることになる、そんなふうに説明すると、「どうして?」と質問されるから、そのあたりをなんとか…

パゾリーニ「わがネーションよ」

パゾリーニの詩はどれもそうなのですが、この詩も強烈です。Facebook に投稿されているのを見かけて、おもわず日本語に訳してみることにしました。 わがネーションよ アラビアの民でもなく、バルカンの民でもなく、古の民でもない 生きているネーションにし…

あえて最悪の場合を考えてみる

『ごちそうさん』の悠太郎の堅物ぶりには、けっこう好感をもっているのですが、今日の放送もなかなかおもしろかったですね。 西門家の末っ子の活男が、海軍の主計課に志願し、船のうえでコックの修行をすると言いだして、母のめ以子は大反対。それでも活男は…

フクイチ・科学技術・「あわい」への思考

フェイスブックにこんな投稿をしたところ、友人たちいくつかのコメントが寄せられました。返事を書こうと思ったのですが、長くなったのでこのブログに記してみることにします。 // 投稿 by 押場 靖志. ぼくは、フクイチ(福島第一発電所)のことが報道されな…

「日本的なもの」の誘惑

長谷川三千子は、その『日本語の哲学へ』において、ぼくたちの話す日本語によって、日本語のなかで、固有の哲学的思考を展開する可能性を開こうとした。それはひとつの冒険だったと思う。しかしその冒険がかくも危険なものへの接近でもあったことを、その「…

殉教の子どもたちと動物の尊厳

先日、『イスタンブールの赤 Rosso Istanbul』という小説(あるいは随筆?)を発表したフェルザン・オズペテク。トルコ生まれにしてイタリア映画を代表する監督である彼が、とても興味深いフレーズをツイートをしていたので、ここで紹介してみたい。 Ci sare…

ある詩人の言葉

あるナポリの詩人のフレーズがぼくをとらえた。こんなフレーズだ。 È la più certa prova d'amore quella di un uomo che cambia parere per essere d'accordo con la donna. (Erri De Luca [1950- ] ) 【男が見解を変えて女と合意しようとすることほど確実…

移民たちの船

10月3日、哀しいニュースが飛び込んで来た。 シチリア島とチュニジアの間に浮かぶランペドゥーザ島の沖で、アフリカからの難民を船が火災を起こして沈没したというのだ。全長20メートルの船には500人以上がすし詰めになっていたという。2日前に乗っ…

ヘイトスピーチ、貧困問題、そして疎外の向こう側へ

今朝のTVサンデーもニングを観ていたら、「風をよむ」のコーナーでヘイトスピーチを取り上げていた。そこでは、ヨーロッパでもそうだが、日本でもヘイトスピーチがネットだけではなく路上でも横行していると報じられていた。これに対してアンチ・ヘイトスピ…

「あまちゃん」とウニの海の大いなるループ

「あまちゃん」もいよいよ来週で終わりだ! もちろんそんなことはわかっていた。けれども「最終週」という文字を見た瞬間、わかっていたことを確認しただけなのに、なぜかぐっとこみ上げてくるものがある。 そうなのだ、「あまちゃん」は、わかっていること…

ドキュメンタリー映画の可能性

Sacro Gra - Official Trailer - YouTube 第70回ヴェネツィア映画祭の金獅子賞は、なんと劇映画ではなくドキュメンタリー映画に贈られるたという。しかもイタリア人監督ジャンフランコ・ローシによる国産のドキュメンタリー作品で、タイトルは『 Sacro GRA…

「あまちゃん」とパンドラの箱

今週の『おら、みんなに会いでぇ!』を見ての感想を一言で言えば、パンドラの箱を開けてしまっても、人生は続くのよ、というところだろうか。 「人生は続く」というのは小泉今日子のセリフだ。映画評論家の町山さんに言わせると「アッバス・キアロスタミ監督…

向いてなくても続けるのって…才能よ

あと1ヶ月ほどとなった「あまちゃん」だが、今日はその劇中映画「潮騒のメモリー」のラストシーンの撮影の場面だった。 思い出してみよう。瀕死の母を演じる鈴鹿ひろ美(薬師丸)が、予定外の演技で布団から起きだし、タンスの引き出しを開けると、この動き…

那智黒と熊野信仰

言葉というのは難しい。 友だちなんかと喋っているときは感じなくても、大勢の前で話さなければならなくなるとさすがに言葉を選ぶ。さらには、こうしてものを書いていると、どうしたって慎重にならざるをえない。さらにぼくなんかは、外国語も扱うから、そう…

宮崎駿『風立ちぬ』

宮崎駿の『風立ちぬ』を見た。 感想を書いておこうと思ってしばらくいろいろ考えていたのだけど、考えれば考えるほど書くべきことが広がってゆき、調べることが増えてゆく。この映画にはそんな広がりがある。そんな広がりのある映画を別の言葉で言えば傑作と…

帰省

ここのところ毎年8月には倉敷に帰省している。 帰省するとまずお寺に挨拶に行き、山の畑から榊や彼岸花をいただくと、少し離れた墓地にまわり、墓石を掃除し、花々を飾り、お経をあげる。セミの鳴き声のなかで汗が流れ落ちる。 なんだか、ありふれたことを…

到来する映画

原発事故を描く映画『朝日のあたる家』が、日本各地の映画館から上映拒否を受けているという。監督の太田隆文さんのブログにはこんな言葉が記されている。 全国の映画館と交渉を続けている。原発事故を題材とした映画なので大手映画館チェーンは上映拒否だと…

原発は反でも脱でも卒でもなく…

選挙が近づいてます。 いろいろ言われてますが、ぼくにとって選挙の争点はやはり「原発」です。原子力発電というものを一体どう考えればよいのか?反対すべきなのか?それとも賛成すべきなのか? ぼくは今まで原発は胡散臭いと思ってきました。あれはヤバい…

痛いアイドルと切ない大人たち

『あまちゃん』の「東京編」の面白さが少しわかってきた気がする。 このところ、東京に出たアキ(能年)が、NGを42回も出したり、選挙でランク外になったり(繰り上げ当選するのだが)と、そのダサさを全開にする一方で、北三陸に残ったユイの壊れぶりが…

『カビリア』と想像の共同体

なかなか風邪が抜けない。だからタバコが旨くない。旨くないからあまり吸わない。こういうのが健康的なのだろうか?でもまあ、不健康なことのできる健康のありがたみがよくわかる。はやく不健康なことができる健康を取り戻さなければ… ともかくもそんな状態…

映画のなかの詩人たち:パゾリーニとダンテ、それからベニーニ

週末にカゼをひいた。 木曜日あたりから調子が悪かったのだけれど、金曜日の午後に帰宅、熱が少々あるのでそのままダウン。なんとか夕食をとってまたダウン。土曜日の早朝、なんとか熱が下がったので飛び起きる。正午前から横浜の朝日カルチャーセンターで映…

運命的反復について(教室で思ったこと)

ぼくは授業の冒頭に Buongiorno, come state? (おはよう、みんな元気?)を繰り返す。授業が終われば教室を出てゆく学生たちに Arrivederci(また会おう) を繰り返す。この繰り返しによって「刻み込まれたもの quello che è insegnato (教えられたもの)…

「おら、東京さ行くだ」

「おら、東京さ行くだ」と言って、ついにアキが東京へ旅立った(正確には "東京に戻る" )。それにしても土曜日の第一部「故郷編」の最終回はお見事でした。備忘のためにも、その見事さについて記しておきたい。 まずは春子/小泉今日子のセリフから。 あの…

中味のない人間

まずは東京新聞のこんな記事から。 自民党の高市早苗政調会長は十八日、原発の再稼働について「東京電力福島第一原発事故で死者が出ている状況ではない」として、原発再稼働を主張した自らの発言について「誤解されたなら、しゃべり方が下手だったのかもしれ…

アイルランド式言祝ぎの歌

マックルモアー&ライアン・ルイスの『アイリッシュ・セレブレーション』は、フェイスブックで紹介してもらった曲ですが、なんだか魂を揺さぶるような力を感じました。思わず日本語してみれば、その内容はまさに「アイルランド式言祝ぎの歌」。 歌っているの…

追悼リトル・トニー

イタリア人にとってはキング・オブ・ロックンロール、おらが国のエルヴィス Elvis di noialtri 。ぼくの歳ぐらいのイタリア人で知らないヤツなんていない。 そんなリトル・トニーの訃報がはいった。 あれはたしか、初めて訪れたヴェネツィア映画祭でのこと。…

エンツォ・ヤンナッチ『王さまに会ったよ』

エンツォ・ヤンナッチの歌う『王に会ったよ Ho visto un re 』を日本語にしてみました。もともとは、ダリオ・フォーの舞台『おいらは考えて歌うぜ Ci ragiono e canto 』(1966年)のための曲だそうです。作詞はフォー、作曲はパオロ・チャルキ。 歌の内容に…

このところ毎朝、ぼくが「あまちゃん」を見ずにはいられないことについて

「おらのママに歴史あり」の最終回(土曜日)、結局アキのおじいちゃん(蟹江敬三)は、一度は引退を宣言したものの、再び遠洋に出る漁船に乗り込むことを決める。そのときのセリフがこれだ。 おらは思っていたほどジジイじゃなかった。じじいと一緒いたら、…

ブルフォードのドラムレッスン

ビル・ブルフォードは大好きなドラマーだ。そのドラミングは「ジャズにしてはロックの要素が強く、ロックにしてはジャズの要素が強い」と言われる。特徴的なのはスネア。硬くチューニングされた高音が、子気味よく変則的に打ち込まれてゆく。本人によれば、…

ウー・ドゥエあるいはU2のポップな反戦歌

イタリアの友人がやってるネルドブラザーズ Neldo brothers が、U2の「ニューイヤーズデイ」のカヴァーを YouTube にアップした。 http://www.youtube.com/watch?v=-l2P4a2s4OY イタリア語では〈ウー・ドゥエ〉と発音されるU2のこの曲は、1983年の『WAR …

5本の指みたいな共同体

なあ、おれたちはある意味、パーフェクトな組み合わせだったんだ、5本の指みたいに。(170頁) かつて多崎つくるには居場所があった。5本の指みたいな「パーフェクトな組み合わせ」と呼ばれるものがそれだ。 始まりは公立高校一年生の夏だったという。つくる…

チェチェンから来た兄弟

兄はタメルラン・ツァルナエフ26歳、弟はジョハル・ツァルナエフ容疑者19歳。 4月15日、このふたり兄弟が仕掛けた爆弾がボストンマラソンのゴール付近で爆発。19日、兄は銃撃戦のすえ死亡、弟もアメリカの威信をかけた大捕り物のすえ拘束された。ニ…

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

村上春樹の新作、昨日の夜11時ごろから読み始めた。 この人の本は読み始めるとやめられないが、今回はとくにそうだ。村上好みの謎解き・ミステリーの話型を採用しながら、そのシンプルな物語がぼくをとらえてはなさない。文字を追う目が真っ赤になって悲鳴…

祝いのとき

春なので春らしい曲をひとつ。 フェルザン・オズペテクの『明日のパスタはアルデンテ』のラストに流れる謡で、Kutlama という。歌うのはオズペテクお気に入りのセゼン・アクス。トルコポップス界の女帝と呼ばれる彼女の声は、葬儀と結婚式、生と死の重なり合…

モータリゼーションとショッピングモール

「ジーンズショップがつぶれ、カラオケがつぶれて、その後にできた100円ショップもつぶれた。100円ショップがつぶれたら町も終わりだで」 新しく始まったNHKの朝ドラ「あまちゃん」で、三陸鉄道の駅員大吉(杉本哲太)が久しぶりに帰ってきた春子(…

Pensiero stupendo

新しくできたイタリアポップスの専門誌に映画のコラムを書きました。 フェルザン・オズペテクの『明日のパスタはアルデンテ』を取りあげ、そのなかで歌われるパティ・プラーヴォの Pensiero stupendo という曲が映画のなかのシーンと見事にシンクロしている…