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雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

まだ読んでいないメルロ=ポンティと映画についての覚書

映画は今はまだ冒頭から終わりまで藝術であるような作品をそれほど多く提供しておりません。人気俳優に対する熱狂や、ショットの変化によるセンセーショナルな効果、あるいは筋の急転、美しいシーンの挿入または気の利いた対話の挿入それぞれが、みな映画に…

ヴィスコンティ『Cadaveri』(1941)を訳してみた

今年の朝日カルチャーセンター(横浜)のイタリア映画講座は、ルキノ・ヴィスコンティについて話している。昨日はその第2回目だったのだけど、いつもにまして多くの受講者がこられてうれしい限り。さすがにフェリーニよりも人気がありますねと言われると、…

祝、エンニオ・モリコーネ。初のオスカー獲得!

エンニオ・モリコーネがついにオスカー受賞した。 2007年にはすでに功労賞をもらっている。ふつうなら功労賞はキャリアの最後にもらうもの。ところがモリコーネは「これが出発点だよ」とコメントしていた。そして、今、おん年87歳にして、新作をもっての堂々…

ウォシャンスキー姉弟『ジュピター』、あるいは彼女の「不思議な力」について

結論から言おう。この映画は傑作だ。 『スターウォーズ』や『マトリックス』と似ているとか、それを超えられたかなんて問題にしているようではだめ。これはSFの形式を借りた寓話であり、そこに込められた寓意とその背後にある現実認識こそが、この映画を傑作…

『進撃の巨人』を観たよ

「進撃の巨人」予告 - YouTube 注目の「進撃の巨人」を観た。 以下、感想をメモったのだけど、ネタバレも含むと思うので、閲覧注意。 冒頭、エレンたちが壁の向こうの世界への憧れを語りあうシーン。これはまさに、原作者である諌山創のスタート地点。だから…

『グラン・トリノ』の「米つきバッタ」

先日、安保法制をめぐる投稿のツイートに、FBの知り合いがコメントしてくれた。クリント・イーストウッドの『グラン・トリノ』(2008年)のなかで、アジア人が「米つきバッタ」と呼ばれているというのだ。ぼくもこの映画見たのだが、「米つきバッタ」という…

『自転車泥棒』と『黒いタンムッリャータ』

むっとするような暑さ。それでも、なんとか大学の授業はあとは採点を残すだけとなり、来週3日ほど集中講座をやって、暑気払いを2回ほど楽しめば、ようやく夏が来るというところ。 この暑さとともに、世の中のきな臭さも少し落ち着いてきているようでもある…

すべてが変わるなかで変わらないもの…

Mercedes Sosa - Todo Cambia (Videoclip) - YouTube ぼくは今、なんだかうっとうしい空気を吸っている。学者たちはいつになく声をあげているし、学生たちさえ緊急のアクションを組織しているし、まわりの誰に聞いても何かがおかしいと答えてはくれるのだけ…

ロベルト・サヴィアーノ、『白夜』について語る

ロベルト・サヴィアーノのことを知ったのは、M.ガッローネの『ゴモラ』(2008)だった。サヴィアーノはこの強烈な作品の原作となった『死都ゴモラ』の著者であり、最近では『コカイン・ゼロ ゼロ ゼロ : 世界を支配する凶悪な欲望』が邦訳さればばかり。饒舌…

『ジャージー・ボーイズ』(2):娘に捧げる父の歌

『ジャージー・ボーイズ』のストーリーは1951年に始まる。その年、ボーイズたちが憧れるフランク・シナトラがエヴァ・ガードナーと結婚する。しかも離婚してすぐの再婚だ。 シナトラとガードナーの交際が発覚したとき、シナトラには妻ナンシーと3人の子…

『ジャージー・ボーイズ』(1):イタリア系コミュニティーのこと

週末、イーストウッドの『ジャージー・ボーイズ』を見た。堅実な演出。キャスティングよし。音楽よし。ちょっと驚いたのは、うちの高校生の娘が、60年代の楽曲や舞台のパフォーマンスを見て、「こういうの好きだわ」とつぶやいていたこと。へえ、以外と6…

13日の金曜日に『8½』を語る(3)

7)「それはわたしだ」 こうして「8.5本目」の作品のために、スタッフと俳優が集められ、映画の断片的で混乱したイメージが形成されてゆく。頭のなかでは明確な作品をつかんだつもりのフェリーニは、そのアイデアを聞いた盟友トゥッリオ・ピネッリや、『甘…

13日の金曜日に『8½』を語る(2)

6)40歳のチャップリン それは1961年のある日のことだったという。次回作の構想を練っていたフェリーニは、シエナ近郊の温泉地キャンチャーノ・テルメにて『8½』となる作品のヒントを得る。そのとき彼の脳裏に浮かんだあらすじを、ケジチは次のように伝え…

13日の金曜日に『8½』を語る(1)

去る3月13日の金曜日、イタリア文化会館でフェリーニの『8½』の上映会があった。ぼくは上映前の15分ぐらいで作品の解説してきた。いくら13日の金曜日だったといえ、よくもまあそんな恐ろしい仕事を引き受けたものだと思う。 ぼくは、特段アカデミックな…

マッテーオ・ガッローネについての覚書

MusicaVita Italia のためのコラムを脱稿。とりあげたのはマッテオ・ガッローネの『リアリティー』。この作品でガッローネは、『ゴモッラ』に続いてカンヌ映画祭のグランプリを獲得したのだが、なるほど良く出来た映画だと思った。 ところがコラムのほうは、…

Totò 『女性』あるいは美しすぎる存在に捧げる詩

Antonio De Curtis, in arte Totò (1898-1967) 昨日11月25日は、「女性に対する暴力撤廃の国際デー」だった。例によってFBにはいくつかの投稿があったのだけど、なかでもぼくの目を引いたのはイタリアを代表する喜劇役者トト(アントニオ・デ・クルティ…

Erri De Luca 『世俗の祈り』

またFBで素晴らしい詩にめぐりあった。地中海の難民たちのことを詠った詩なのだけれど、神ではなく海にむかっての祈りとして書かれたものだ。だからそのタイトルは「世俗の詩」。ランペドゥーサ沖の悲劇のことや、その悲劇を先取りした映画「海と大陸」のこ…

パオロ・ヴィルツィー『見わたすかぎり人生』(2008)

雑誌 Musicavita Italia のためのコラムの草稿ができた。塩漬けして明日には送付の予定。で、前回の記事で、そこに挙げたおいたヴィスコンティの論文は、このコラムのための準備だと書いていたのだけど、マッテオ・ガッローネの『リアリティー』に絡めて考え…

人間の姿をした映画(ルキノ・ヴィスコンティ)1943

ヴィスコンティは、そのデビュー作『郵便配達は2度ベルを鳴らす』(1942)を発表したのち、映画雑誌チネマに Cinema antropomorfico と題する小論を発表する。まだネオレアリズモという言葉がなかったころ、後にその先駆とされる作品を発表したばかりのヴィ…

バラとジャスミン:フェリーニ『道』(1954)

最近ちょっとした出会いがあって、忘れかけていた映画を語る歓びを思い出すことができました。せっかくだからここに、少し自分の書いて来たものをふりかえってみようと思います。あちらこちらに書き散らしたコラムを、少しずつアップしてゆくことにします。 …

おお、アメリカ!『ゾンビランド』にゾワっとする。

なるほどね。 引きこもりのダメ男(ジェシー・アイゼンバーグ)がヒーローになるという話型に、できのあまりよくない主人公を怪力男マチステ顔負けのゾンビキラー(ウディ・ハレルソン)が助けるという古典活劇を組み合わせ、そこに男を食い物にする悪女だけ…

蜷川幸雄『わたしを離さないで』

『わたしを離さないで』 PV - YouTube この連休に、蜷川幸雄の舞台『わたしを離さないで』を観てきた。 原作はカズオ・イシグロの同名小説。原作は読んでいた。映画化された作品も観た。それでも舞台は新鮮だった。ひさしぶりの舞台ということもあったのかも…

レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『デスソング』

Red Hot Chili Peppers - Brendan's Death Song ...今日はよく晴れた心地よい日和なのだけど、なぜか朝からレッド・ホット・チリ・ペッパーズのビデオクリップを見続けている。『ブレンダンのデスソング』と題されたこの曲は、文字通り「死者の歌」であ…

「日本的なもの」の誘惑

長谷川三千子は、その『日本語の哲学へ』において、ぼくたちの話す日本語によって、日本語のなかで、固有の哲学的思考を展開する可能性を開こうとした。それはひとつの冒険だったと思う。しかしその冒険がかくも危険なものへの接近でもあったことを、その「…

殉教の子どもたちと動物の尊厳

先日、『イスタンブールの赤 Rosso Istanbul』という小説(あるいは随筆?)を発表したフェルザン・オズペテク。トルコ生まれにしてイタリア映画を代表する監督である彼が、とても興味深いフレーズをツイートをしていたので、ここで紹介してみたい。 Ci sare…

移民たちの船

10月3日、哀しいニュースが飛び込んで来た。 シチリア島とチュニジアの間に浮かぶランペドゥーザ島の沖で、アフリカからの難民を船が火災を起こして沈没したというのだ。全長20メートルの船には500人以上がすし詰めになっていたという。2日前に乗っ…

ヘイトスピーチ、貧困問題、そして疎外の向こう側へ

今朝のTVサンデーもニングを観ていたら、「風をよむ」のコーナーでヘイトスピーチを取り上げていた。そこでは、ヨーロッパでもそうだが、日本でもヘイトスピーチがネットだけではなく路上でも横行していると報じられていた。これに対してアンチ・ヘイトスピ…

ドキュメンタリー映画の可能性

Sacro Gra - Official Trailer - YouTube 第70回ヴェネツィア映画祭の金獅子賞は、なんと劇映画ではなくドキュメンタリー映画に贈られるたという。しかもイタリア人監督ジャンフランコ・ローシによる国産のドキュメンタリー作品で、タイトルは『 Sacro GRA…

向いてなくても続けるのって…才能よ

あと1ヶ月ほどとなった「あまちゃん」だが、今日はその劇中映画「潮騒のメモリー」のラストシーンの撮影の場面だった。 思い出してみよう。瀕死の母を演じる鈴鹿ひろ美(薬師丸)が、予定外の演技で布団から起きだし、タンスの引き出しを開けると、この動き…

宮崎駿『風立ちぬ』

宮崎駿の『風立ちぬ』を見た。 感想を書いておこうと思ってしばらくいろいろ考えていたのだけど、考えれば考えるほど書くべきことが広がってゆき、調べることが増えてゆく。この映画にはそんな広がりがある。そんな広がりのある映画を別の言葉で言えば傑作と…

到来する映画

原発事故を描く映画『朝日のあたる家』が、日本各地の映画館から上映拒否を受けているという。監督の太田隆文さんのブログにはこんな言葉が記されている。 全国の映画館と交渉を続けている。原発事故を題材とした映画なので大手映画館チェーンは上映拒否だと…

『カビリア』と想像の共同体

なかなか風邪が抜けない。だからタバコが旨くない。旨くないからあまり吸わない。こういうのが健康的なのだろうか?でもまあ、不健康なことのできる健康のありがたみがよくわかる。はやく不健康なことができる健康を取り戻さなければ… ともかくもそんな状態…

映画のなかの詩人たち:パゾリーニとダンテ、それからベニーニ

週末にカゼをひいた。 木曜日あたりから調子が悪かったのだけれど、金曜日の午後に帰宅、熱が少々あるのでそのままダウン。なんとか夕食をとってまたダウン。土曜日の早朝、なんとか熱が下がったので飛び起きる。正午前から横浜の朝日カルチャーセンターで映…

「おら、東京さ行くだ」

「おら、東京さ行くだ」と言って、ついにアキが東京へ旅立った(正確には "東京に戻る" )。それにしても土曜日の第一部「故郷編」の最終回はお見事でした。備忘のためにも、その見事さについて記しておきたい。 まずは春子/小泉今日子のセリフから。 あの…

チェチェンから来た兄弟

兄はタメルラン・ツァルナエフ26歳、弟はジョハル・ツァルナエフ容疑者19歳。 4月15日、このふたり兄弟が仕掛けた爆弾がボストンマラソンのゴール付近で爆発。19日、兄は銃撃戦のすえ死亡、弟もアメリカの威信をかけた大捕り物のすえ拘束された。ニ…

祝いのとき

春なので春らしい曲をひとつ。 フェルザン・オズペテクの『明日のパスタはアルデンテ』のラストに流れる謡で、Kutlama という。歌うのはオズペテクお気に入りのセゼン・アクス。トルコポップス界の女帝と呼ばれる彼女の声は、葬儀と結婚式、生と死の重なり合…

モータリゼーションとショッピングモール

「ジーンズショップがつぶれ、カラオケがつぶれて、その後にできた100円ショップもつぶれた。100円ショップがつぶれたら町も終わりだで」 新しく始まったNHKの朝ドラ「あまちゃん」で、三陸鉄道の駅員大吉(杉本哲太)が久しぶりに帰ってきた春子(…

ナイト・シャマラン『エアベンダー』

3週連続でのイタリア映画のセミナーがようやく終わった。 さすがに疲れたので息抜きに、ファンタジー映画が見たいという中学の娘と『エアベンダー』を見る。アメリカのTVアニメ『アバター 伝説の少年アン』の映画化で、ナイト・シャマランの作品。 シャマラ…

J.ウィリアムズ『佐渡テンペスト』

映画『SADO テンペスト』予告編 なるほど、佐渡テンペストは希望に向かう映画だったのだ。 リーマンショック以降の経済停滞で、もはや映画を撮ることができなくなったのではないかと鬱々としていたウィリアムズは、佐渡の自然に心を打たれ、その場所で映画を…

サム・ライミ『オズ、はじまりの戦い』

映画『オズ はじまりの戦い』予告編 土曜日、中学生の娘と映画を観に行く。 日本映画で山田洋次の『東京物語』とか、沖田修一の『横道世之介』などが候補にあがっていたのだが(前者のオリジナルは小津の『東京物語』で大好きな蒼井優が出ているし、後者は沖…

イタリア映画への誘い(2)

フェルザン・オズペテクの『向かいの窓』は、具体的にはどんなふうに「すばらしいイタリア映画」なのだろうか。どうして多くのイタリア人をうならせたのだろうか。そのあたりを考えてみよう。 まずは映画の冒頭、こんなシーンから。 暗い通りに人影が現れる…

イタリア映画への誘い(1)

千葉での講座「イタリア映画への誘い」が無事終了。 朝までバタバタとスライドの準備をして、京葉道路をぶっ飛ばして、到着するや90分ぶっとおしで喋りまくる。映画のシーンをちらりと見せるところで、水を口に含んでしばし喉休め。その間も頭の中はぐるぐ…

千葉、渋谷、そして横浜(イベントのご案内)

来週から3週連続3カ所でイタリア映画のセミナーをやります。 第1弾は千葉。 来週2月26日(火)、千葉市民文化大学というところで「イタリア映画への誘い」という講座をやります。じつはこれ、7月に予定されているイタリア映画の講座の予告編なのです…

R.ジョンソン『ルーパー』

『LOOPER/ルーパー』予告編 気になっている映画だったもので、日曜日に池袋で見てきた。 なるほど、映画評論家の町山さんが言っていた「その手があったか!」というのが分かった。 誰かが「けっこう感動的ですよ」と言うのも分かった。 でも、なんだか既視…

クリアレーゼ『海と大陸』(2)

クリアレーゼはメッセージを持つ映画は撮りたくない言う。しかし同時に、観客が想像力を働かせる余地のある映画を撮りたいとも言う。おそらく彼は、映画によって物語を起動させたいのだと思う。うまく物語がうまく動きだせば、あとはぼくたちが想像力を働か…

クリアレーゼ『海と大陸』(1)

一昨日、『海と大陸』の試写に行ってきた。最初に言ってしまうおう。これは傑作だ。少なくともぼくは、しばらくこの映画について機会があるごとに何度も言及することになると思う。 1965年ローマ生まれのエマヌエーレ・クリアレーゼは、モレッティではないけ…

トム・フーパー『レ・ミゼラブル』

映画『レ・ミゼラブル』予告編 オープンングから引き込まれる。CGの豪快さがこれは映画だと訴え、囚人たちの歌う "Look down" のコーラスがミュージカルだと教えてくれる。そして、あの憎々しいジャヴェール(ラッセル・クロウ)の歌声がまるで自然なセリフ…

ロドリゲス『フロム・ダスク・ティル・ドーン』

クールが信条のジョージ・クルーニーがクールでいられない。 なにしろクールなヤツの足を引っ張ることを信条とするタランティーノが、いかにもまじめそうな顔で狂気への扉を開こうとするのだから。 悩めるタフガイのハーヴィ・カイテルは、そんなクルーニー…

園子温『希望の国』

新宿で娘と鑑賞。親子割引でふたりで2千円だって、なんだかうれしいぞ。 見終わったとき娘が言う。「グロイ場面を予想していたら、 いつの間にか終わってしまった」。たしかに園子温にしては穏やかな作品だ。まだ廃墟に死者たちが感じられたからだろうか、…