雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

もろもろ

戦争・ストーリー・そしてワイン

戦争はストーリーから始まる。戦争とはストーリーの戦いでもある。どこにいて、どの言葉で、どのストーリーを聞くか。それによって戦争の姿が変わる。 たとえばイラク戦争(2003-2011)。それは大量破壊兵器を隠し持っているというストーリーから始まった。…

親父とお袋、それから介護と虐待の向こう側へ

ある作家とある評論家のツイッターでやりとりが目に入りました。「ケア」のなかに「虐待」を読み取った評論家に、作家が「虐待」とは書いていないと反論する構図のようでした。このおふたりは、冷静にやりとりをされ、互いに落とし所を探しておられた。ツイ…

ネコと絶対音感と人類学的マシン

www6.nhk.or.jp 今朝テレビつけたら養老孟司さんが話していた。 「人間と違って動物は言葉をもたない。なぜか。すべての動物は絶対音感なんです。みなさんが例外なんです。私が「ネコ」というのと、司会者の女性が「ネコ」というのと、音の高さが違う。違う…

ゾンビと免疫と来るべき共同体

ちまたでは、まだまだウイルスの話でもちきり。ローマの音楽院ではアジア人のレッスンがキャンセルされたとか、どこかの国の生物兵器ではないかとか、アメリカの対応に比べて我が国ときたらという嘆きとか。そんなおり、娘とウイルスの話をしていて、興味深…

コロナウイルス雑感

東京でもマスクが売り切れているといいます。311のときミネラルウォーターが店頭から消えたことを思い出しますね。あのときは放射能汚染でしたが、今回はコロナウイルスがひき起こしたちょっとしたパニックというわけです。 放射能とかウイルスとか、ぼく…

長崎の教皇と「死に神」の舞い降りた場所

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52550690U9A121C1ACYZ00/ 今朝、教皇フランシスコが長崎を訪問したニュースを見る。アルゼンチン生まれの教皇の母語スペイン語で、核廃絶を訴えた。 長崎は雨、雨がっぱの参列者。気になったのはその場所。あの平和公…

日本国憲法9条とイタリア共和国憲法11条

ずっと疑問だったことがひとつ解消した。加藤典洋の『9条入門』を読んでいて、イタリアの憲法の「戦争放棄」という部分に言及した箇所を読んで、ぼくは、ああそういうことだったのかと膝をうった。「同じ敗戦国であるドイツとイタリアの憲法にはあった《相…

人格、あるいはペルソナをめぐって

Il Phersu, Tomba degli Auguri, Necropoli dei Monterozzi, Tarquinia (Wikipedia it.) きっかけはこんなツイートだ。 経験上、言葉が変わると人格は変わる。 https://t.co/SV8wb9zddG — 押場靖志 (@yasujioshiba) February 4, 2019 「言語は思考そのもの」…

コンタクトゾーンと認知症

TWでこんな記事をみかけた。ぼくは自分の親父のことを考えてしまった。 bunshun.jp ぼくの親父も、この記事にある「嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)性認知症」と診断された。症状が出たとき最初は驚いた。けれど介護保険の制度を頼り、病院で診断を受けてゆくに…

憲法記念日にカフカ

憲法記念日の今日、朝からカフカの『審判』に出てくる寓話、「法の前にて」について考えた。 ポイントは3つ。 1つは、その門が開いてるということ。空いている門に入れないのはそこに門番がいて「今は入れない」という。田舎から来た男はそれを信じて入れ…

マン、ヒューマン、デビルマン...

www.youtube.com テクノビート 単調な波形 MAN HUMAN という声 反復して 反響する MAN MAN MAN MAN MAN の連呼 HUMAN の解体 ビートは 止まらない エレクトリックな装飾音 幾重にも纏い 先へ先へと 止まる気配のないビート まるで なんとしても あの真紅の …

韓国大統領選、東京喰種、そして Us and Them

近くて遠いとなりの国 韓国はどこへ行く? - 放送内容まるわかり! - NHK 週刊 ニュース深読み 今朝(5月13日)の「NHKニュース深読み」で、文在寅( ムン・ジェイン)という研究者の言葉にハッとさせられた。北と戦争が始まると、まっさきに戦場に駆…

憲法改正国民投票の敗北を受けてマッテオ・レンツィの演説(ちょっと訳してみた)

国民投票での敗北を受け、レンツィ首相が辞任しました。ちょっとした驚きです。ほんとうに辞任するかどうか、みんな半信半疑だったわけですが、ある意味で潔く身を引いたわけです。 これからどうなるのか。ヨーロッパの先行きが見えなくなってきたわけですが…

「共和制 Republic 」と「低脳 Moron」 をめぐって

Facebook に投稿されていた記事だけど、ちょっと気になったので、それについて書いてみる。 ultimateclassicrock.com 上の記事は「ブルース・スプリングスティーンはドナルド・トランプを低脳だと思っている」というタイトル。 ちらっと読んで気になったのは…

ダッカ・テロ事件についてイタリア大統領のコメント(日本語訳)

ダッカのテロ事件を受けて、メキシコシティを訪れていたイタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領の緊急コメントです。こういうときのコメントは大変難しいのですが、大統領は落ち着いた話しぶりで、言葉を選んでいると思います。イタリア語の勉強もかねて、…

まだ読んでいないメルロ=ポンティと映画についての覚書

映画は今はまだ冒頭から終わりまで藝術であるような作品をそれほど多く提供しておりません。人気俳優に対する熱狂や、ショットの変化によるセンセーショナルな効果、あるいは筋の急転、美しいシーンの挿入または気の利いた対話の挿入それぞれが、みな映画に…

英国のEU離脱をめぐる R. Saviano の記事を訳してみた

英国のEU離脱をめぐって、いろいろな人がいろいろなことを言っている。ぼくの周りでも、、悲しんだり怒ったりする人がいるし、なんとか結果を受け止めようと考えている人もいる。かとおもえば、中東の事情を考えれば、国境線が変わるなんてあたりまえで、…

ベルギーのテロをめぐって:ジグムント・バウマンへのインタビュー

ヴェネツィアの友人がFBに投稿していた記事が興味深い。イタリアのコッリエーレ・デッラ・セーラ紙のサイトに掲載されたインタビューなのだが、そのページがこれ。 www.corriere.it インタビューに答えているのはジグムント・バウマン(Zygmunt Bauman、1925…

ブドウ畑の階級闘争

エスプレッソ誌のサイトから、ブドウ畑のルポルタージュが飛び込んできた。

すべてが変わるなかで変わらないもの…

Mercedes Sosa - Todo Cambia (Videoclip) - YouTube ぼくは今、なんだかうっとうしい空気を吸っている。学者たちはいつになく声をあげているし、学生たちさえ緊急のアクションを組織しているし、まわりの誰に聞いても何かがおかしいと答えてはくれるのだけ…

B.ラッセル:未来の世代へのメッセージ

『ジャージーボーイズ』の続きを書く前に、ちょっと寄り道。 ここに、備忘のため訳出しておくののは、イギリスの偉大な哲学者バートランド・ラッセルの言葉。それは、1959年にBBCの番組 Face-to-Face において、1000年先の世代に自分が人生において学…

ドイツ旅客機の墜落事故について

フェリーニの『8 1/2』の続きを書きたいところなのだけれど、どうにもあのドイツ旅客機の墜落事故が気になって仕方がない。じつはフェリーニのこの作品について、ぼくはうつ病と自殺ということを書こうとしていたのだ。そこに飛び込んできたのが、副操縦士…

ランペドゥーサ難民収容所からの声

ごく最近、またしても300人もの難民が地中海で命を落とした。以前にも『海と大陸』という映画を紹介するときに、同じような話を書いたことがあるけれど、いったい悲劇はいつまで繰り返されるのだろう。 以下に訳出するのは、セイブ・ザ・チルドレン(イタ…

僕らの良心の検証のために:"Solo andata" を訳す

2月になっても胃の痛くなるようなニュースが続いている。 11日、シチリア海峡で330人の移民が溺死したという。ヨーロッパに希望を求めた彼らは、なけなしの金を巻き上げられ、たよりないボロ船に押し込まれ、リビアの海岸から冷たい冬の地中海に投げ出…

ハリウッドさながらのイスラム

気の滅入るニュースが続いているが、少し前にイタリアの友人から興味深い記事を教えてもらっていたことを思い出した。それがこれ。 <a href="http://www.ilpost.it/giacomopapi/2015/01/14/islam-occidentalizzato/" data-mce-href="http://www.ilpost.it…

チャーリー・ブラウンの嘆き

例によってFBの話題から。 フランスで起こった「週刊シャルリー」社への襲撃事件をめぐるさまざまな投稿のなかで、ぼくがハッとしたのが上の画像です。 ぼくがこのチャーリー・ブラウンの風刺画を示唆的だと思うのは、頭を抱えているチャーリーが嘆いている…

John C Jay の言う《Be authentic》とは?

あのユニクロで知られるファーストリテイリングは、自社のグローバルクリエイティブ特活として、世界的なクリエイターのジョン・C・ジェイ(John C Jay)氏を迎えるという記事を読んだ。 ぼくの目を引いたのが、ジェイ氏が若いデザイナーのために提言したと…

蜷川幸雄『わたしを離さないで』

『わたしを離さないで』 PV - YouTube この連休に、蜷川幸雄の舞台『わたしを離さないで』を観てきた。 原作はカズオ・イシグロの同名小説。原作は読んでいた。映画化された作品も観た。それでも舞台は新鮮だった。ひさしぶりの舞台ということもあったのかも…

パゾリーニ「わがネーションよ」

パゾリーニの詩はどれもそうなのですが、この詩も強烈です。Facebook に投稿されているのを見かけて、おもわず日本語に訳してみることにしました。 わがネーションよ アラビアの民でもなく、バルカンの民でもなく、古の民でもない 生きているネーションにし…

フクイチ・科学技術・「あわい」への思考

フェイスブックにこんな投稿をしたところ、友人たちいくつかのコメントが寄せられました。返事を書こうと思ったのですが、長くなったのでこのブログに記してみることにします。 // 投稿 by 押場 靖志. ぼくは、フクイチ(福島第一発電所)のことが報道されな…