雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

イタリア語スピーチコンテストをめぐって:動物とレプリカントの間で

1 スピーチコンテスト 土曜日は日伊協会主催のイタリア語スピーチコンテストに行ってきました。 今年優勝したのは斎藤紀子さん。スピーチのタイトルは『La Roma che ho ritrovato a Damasco』。 ダマスカスといえばシリアの有名な都市です。けれども、シリ…

M.ベロッキオの B.ベルトルッチ追悼書簡

Bernaldo Bertolucci (1941年3月16日 - 2018年11月26日) ベルトルッチの訃報が入った。77歳。しばらく前から病気に苦しんでいたという。この訃報に触れたマルコ・ベロッキオの公開書簡の言葉が、イタリアのネット記事に載っていたので、紹介したいと思う。…

コンタクトゾーンと認知症

TWでこんな記事をみかけた。ぼくは自分の親父のことを考えてしまった。 bunshun.jp ぼくの親父も、この記事にある「嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)性認知症」と診断された。症状が出たとき最初は驚いた。けれど介護保険の制度を頼り、病院で診断を受けてゆくに…

「世間様」から踏み出すこと:イタリア語の《 proprio 》をめぐって

FBに投稿されたイタリア語のレッスンビデオです。ここでは《proprio》という単語の用法が紹介されています。 «proprio»というイタリア語に苦労している人は多いですよね。ここでは、その形容詞的用法が説明されてます。図式的にその用法をまとめれば次の3つ…

モリコーネ VS タランティーノ?

今月の10日、エンニオ・モリコーネ90歳の誕生日、イタリアのシネファクツ ( CineFacts!)というサイトから、巨匠がタランティーノを「おばか un cretino 」よばわりしたというニュースが配信された。記事はドイツのプレイボーイ誌を元ネタ *1 にしたもので…

Vecchio frack (1955) を訳してみた

ドメニコ・モドゥンニョといえば『ヴォラーレ Nel blu dipinto di blu』(1958)が有名だけど、その前に発表された『ヴェッキオ・フラック Vecchio frack』(1955)に触れる機会があった。なんとなく知ってはいたのだけれど、ちょっとじっくり聞いてみると、…

「結婚演出家」を楽しむために

『Viva!イタリアvol.4』予告編 昨日の日伊協会でのベロッキオの話、備忘のためにざっと概略を。 まずは「結婚演出家」のイタリア語タイトル il regista di matorimoni を解説。regista は確かに「演出家」なんだけど、映画なら「監督」。ついでに matorimoni…

ベロッキオのリアルをめぐって

このところ、ベロッキオについて考えている。3週間後には、少しまとまった話をしなければならないからだ。 www.aigtokyo.or.jp ここでは備忘のために、Filmarks のメモを再掲しておくことにしよう。 1)『母の微笑』 背景には、当時の時代設定(大聖年)と…

映画のリアルとイリュージョン

誰かがマルコ・ベロッキオの映画のことを「幻覚的なリアリズム」と読んで/呼んでいた。 なるほど、そうかもしれない。でも、あれは幻覚なのだろうか。むしろ、ぼくにはとてもリアルなものに見えたのだけど、それを幻覚と言ってしまうのは、すこしばかりイー…

憲法記念日にカフカ

憲法記念日の今日、朝からカフカの『審判』に出てくる寓話、「法の前にて」について考えた。 ポイントは3つ。 1つは、その門が開いてるということ。空いている門に入れないのはそこに門番がいて「今は入れない」という。田舎から来た男はそれを信じて入れ…

クランベリーズの『ゾンビ』を訳してみた

昨日、バンドメンバーからクランベリーズのある曲をやろうという提案があった。ギターを取り出してコードを探っていたのだけど、ぼくはどうしてもこっちの曲が頭から離れない。歌ってみるとシンプルなコードにキーも低め。案外いけるぞ、なんて思いながら歌…

トーテムポールを見上げるゾンビたち

www.youtube.com 映画のことはフィルマークスに書いているのだけど、この作品はまだリストアップされていないので、こちらに。 お題はこの映画。『飢えた侵略者』(2017)。原題は英語タイトルが Ravenous 、フランス語がLes Affamés 。 ゾンビ映画の「再発…

プロフェッソーレとマエストロ

Retweeted 中田考 (@HASSANKONAKATA): 大学の教員は、小中高の教師とは根本的に違います。大学では教員が教えるのではなく、学生が学ぶのです。少なくとも私が大学生の時はそれが大学というとものだ、ということには学生と教員の間に広範な合意があったと思…

マン、ヒューマン、デビルマン...

www.youtube.com テクノビート 単調な波形 MAN HUMAN という声 反復して 反響する MAN MAN MAN MAN MAN の連呼 HUMAN の解体 ビートは 止まらない エレクトリックな装飾音 幾重にも纏い 先へ先へと 止まる気配のないビート まるで なんとしても あの真紅の …

ジョヴァノッティのアモーレ、ダンテのアモーレ

www.youtube.com ジョヴァノッティを知ったのはたぶんこの曲だったと思う。NHKのテレビイタリア語が始まったのは1990年だけど、この曲はその4年後に発表されている。たしか、ちょうどそのころ出演しはじめたダニオ・ポニッシさんが番組のなかで紹介して…

ユー・バーン・ミー・アップ、訳してみた

あけましておめでとうございます。 お雑煮つくって、おせちを食べて、おとそを飲んで、初詣に行って帰ってきたら、新年早々に、飛び込んできたのがブライアン・イーノのこのツイート。これ、ぼくの大好きなアルバムなのです。 Robert Fripp: You Burn Me Up …

ジェルソミーナとローザ、あるいは『道』の反復をめぐって

授業でやってる『道』の冒頭のシーンの続き。 ここでのダイアローグなんだけど、ポイントはやはりローザの存在。 近所の女性がジェルソミーナに近づいて来て言う。 - Te ne vai, Gelsomina? (行くのかい、ジェルソミーナ?) そこでジェルソミーナは「Parto…

Una bocca di meno da sfamare... (フェリーニの『道』より)

フェリーにの『道』のセリフだけど、先日、中級の授業で質問が出た箇所がこれ。 T'impara un mestiere anche a te e guadagni qualcosa anche te e qui in casa è una bocca di meno da sfamare...(Dalla battuta di Madre, "La strada" in IL PRIMO FELLINI…

ジョヴァノッティの新曲 "Oh, Vita!" 、訳してみた

ジョヴァノッティのニューアルバムを聞いた。その一曲目、リズムが気に入った。歌詞も悪くない。むしろ、その嫌味のない若々しさが心地よい。 1966年生まれで今年51歳になったジョヴァノッティ。若造(ジョヴァノット)ではない。けれども、ここには50代…

あらゆる終わりを超えて響き渡る「叫び」

先日、横浜の朝日カルチャーセンターで『テオレマ』について話してきました。しかも「名作の謎と秘密」というシリーズだったのですが、いやはや、さすがにパゾリーニは簡単ではありません。語りきれなかったことや、まだまだわからない疑問も含めて、これか…

「似る」こと:「親和力」と「深くて暗い川」

この日曜日、どうしてだか「親和力」のことを考えることになったのは、この記事が始まりだった。 cakes.mu ここで東浩紀はこんなことを言っている。 人間はそもそも、言葉だけではなく、服装や振る舞いや声の高さ低さや、じつに多様なチャンネルからの情報を…

母の日の翌日、パゾリーニを訳してみた

www.youtube.com 昨日はずっと「親和力」のことを考えていた。母の日だったのだ。だから、今朝、一日遅れのイタリアからパゾリーニの詩が届いたのだけど、それはまさに「親和力」についての詩だと気がついた。タイトルは「母への懇願 Supplica a mia madre …

韓国大統領選、東京喰種、そして Us and Them

近くて遠いとなりの国 韓国はどこへ行く? - 放送内容まるわかり! - NHK 週刊 ニュース深読み 今朝(5月13日)の「NHKニュース深読み」で、文在寅( ムン・ジェイン)という研究者の言葉にハッとさせられた。北と戦争が始まると、まっさきに戦場に駆…

憲法改正国民投票の敗北を受けてマッテオ・レンツィの演説(ちょっと訳してみた)

国民投票での敗北を受け、レンツィ首相が辞任しました。ちょっとした驚きです。ほんとうに辞任するかどうか、みんな半信半疑だったわけですが、ある意味で潔く身を引いたわけです。 これからどうなるのか。ヨーロッパの先行きが見えなくなってきたわけですが…

「共和制 Republic 」と「低脳 Moron」 をめぐって

Facebook に投稿されていた記事だけど、ちょっと気になったので、それについて書いてみる。 ultimateclassicrock.com 上の記事は「ブルース・スプリングスティーンはドナルド・トランプを低脳だと思っている」というタイトル。 ちらっと読んで気になったのは…

パオロ・コンテの Chiamami adesso を訳してみた

FBで大好きなパオロ・コンテの歌詞の一節が流れてきた。知っている歌の一節だったから、すぐに頭のなかであのしわがれ声が響いた。それで、どういうわけか思ったんだ。あっ、これは今、この僕に向けられた言葉なのかもしれないってね。そのイタリア語がこれ…

ダッカ・テロ事件についてイタリア大統領のコメント(日本語訳)

ダッカのテロ事件を受けて、メキシコシティを訪れていたイタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領の緊急コメントです。こういうときのコメントは大変難しいのですが、大統領は落ち着いた話しぶりで、言葉を選んでいると思います。イタリア語の勉強もかねて、…

まだ読んでいないメルロ=ポンティと映画についての覚書

映画は今はまだ冒頭から終わりまで藝術であるような作品をそれほど多く提供しておりません。人気俳優に対する熱狂や、ショットの変化によるセンセーショナルな効果、あるいは筋の急転、美しいシーンの挿入または気の利いた対話の挿入それぞれが、みな映画に…

英国のEU離脱をめぐる R. Saviano の記事を訳してみた

英国のEU離脱をめぐって、いろいろな人がいろいろなことを言っている。ぼくの周りでも、、悲しんだり怒ったりする人がいるし、なんとか結果を受け止めようと考えている人もいる。かとおもえば、中東の事情を考えれば、国境線が変わるなんてあたりまえで、…

ヴィスコンティ『Cadaveri』(1941)を訳してみた

今年の朝日カルチャーセンター(横浜)のイタリア映画講座は、ルキノ・ヴィスコンティについて話している。昨日はその第2回目だったのだけど、いつもにまして多くの受講者がこられてうれしい限り。さすがにフェリーニよりも人気がありますねと言われると、…