雲の中の散歩のように

Cinema letteratura musica どこまで遠くにゆけるのだろう

3月9日横浜、朝カル「アンナ・マニャーニ:芸に生き、愛に生き」(1)

先週の土曜日、横浜の朝日カルチャーセンターで話してきました。横浜では「イタリア映画の魅力を探る、懐かしの俳優たち」と題して、ジーナ・ロッロブリージダ、クラウディア・カルディナーレ、シルヴァーナ・マンガノと取り上げてきましたが、今回はその4…

カルロ・ルドヴィーコ・ブラガッリャ『人生は素晴らしい』(1943)短評

日本語版DVD。24-41。マニャーニ祭り。これは楽しい。堪能した。 実はタイトルだけは知っていた。ロベルト・ベニーニの『ライフ・イズ・ビューティフル』と同名があるという記事を読んだからだ。今回はアンナ・マニャーニを追いかけながらのキャッチアッ…

フェリーニ&ロータ(3):『カビリアの夜』と音楽の力

昨日朝カル立川で「イタリア映画を聴く」のシリーズとして「フェリーニとロータ(3)』を話してきました。ほんとうは『カビリアの夜』『甘い生活』そして『8½』の3本を話すつもりだったのです。でもね、いやいや、フェリーニ&ロータは奥が深い。結局はほ…

ナポリのカンツォーネ『レジネッラ(Reginella)』(1917)を訳してみた

アンナ・マニャーニの評伝を読んでいる。冒頭に引用されるのがこの『レジネッラ』の一節。マニャーニの祖母が好きだった曲。母に捨てられ、祖母に育てられたマニャーニは、しばしば祖母から請われてこの曲を歌ったという。 www.youtube.com マニャーニが生ま…

『Tempo massimo』(1934)短評:デ・シーカ&ミリー、そしてマニャーニ

イタリア版DVD。イタリア語字幕付き。24-39。マニャーニ祭り。これは面白かった。マニャーニの2作目。デビュー作『La cieca di Sorrento(ソレントの盲女)』と同じ時期だけど、マニャーニらしさが出ているのはこちら。 タイトルの「Tempo massimo」はス…

『La cieca di Sorrento(ソレントの盲女)』(1934)短評

マニャーニ祭り。イタリア版DVDの到着を待ちながら、デビュー作ということで辛抱たまらず、このサイトにて視聴。24-38。Filmaks のリストになし。1)原作者 F.マストリアーニ 1934年の作品でタイトルは「ソレントの盲女」。原作はフランチェスコ・マスト…

蘇ったフィルムたち:映画か、それとも動画か、はやり映画なのか!

昨日はイタリア文化会館の「蘇ったフィルムたち チネマ・リトロバート映画祭:特別上映・レセプション」に参加してきました。この映画祭は知る人ぞ知る映画祭で、ぼくも名前だけは聞いていたのですが、今回はめでたくも京橋の日本の国立映画アーカイブでその…

『夏の嵐』(1954):堕ちてゆく者のメロドラマ(2)

もうひとつの『妄執』 ヴィスコンティといえば「デカダンス」や「敗者の美学」が解読のカギとなる。ぼくもこれまでずっとその線で考えてきた。その意味で、映画研究者マウロ・ジョーリ(Mauro Giori)の分析は興味深い。『夏の嵐』は「もうひとつの『妄執(…

『夏の嵐』(1954):堕ちてゆく者のメロドラマ(1)

師走の23日、新宿のカルチャーでヴィスコンティ『夏の嵐』を話す。直前までどんな話になるかわからないのはいつものとおり。むかし授業でシナリオも読んだ。内容はだいたいわかっている。けれども調べれば新しい発見がある。そうだったのかと思うことが次か…

シルヴァーナ・マンガノの微笑み(2)

さてさて、午後にちょっとお芝居をみて、買い物をして、煮込みうどんを食べて、風呂にも入った。「マンガノの微笑み」の続きを書いておく。書かないと多分ほうったらかしになりそうだし。 1950年代のマンガノは、夫のデ・ラウレンティイスの後押しもあって、…

シルヴァーナ・マンガノの微笑み(1)

昨日は横浜でシルヴァーナ・マンガノのことを話してきた。今年の春から懐かしのイタリア映画と銘打ってロッロブリージダ、カルディナーレと続けてきたけれど、年末はマンガノ。 日本では「マンガーノ」と表記されてきた。アクセントの音節が後ろから2番目な…

ルイージ・マンニ『Scipione detto anche l'Africano』(1971)短評。

YT。字幕なし。23-177。マンガノ祭り。イタリアのアマプラにはタイトルがあるのだが、残念ながら見られない。少しばかり歴史の知識が必要かも。1971年という時代背景。戦後15年になる共和国イタリアにおいてもはや英雄は必要ない。それでも英雄になりたがる…

カメリーニ『Crimen』(1960)短評

イタリア版DVD。字幕なし。23-176。マンガノ祭り。Filmarks にタイトルがなかったのでこちらに短評。これは楽しかった。ガズマン、ソルディ、マンフレーディのそれぞれに、ドリアン・グレイ、マンガノ、フランカ・ヴァレーリが寄り添うダブルトリオ。死体…

ブラゼッティ『Io, io, io... e gli altri』(1966)短評

2021年の夏、イタリア版DVDを見てFBに短評を書いたのだけど、そのままになっていた。ちょうど今「マンガノ祭り」の最中なので、こちらに転載。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 1966年の作品、日本語にするのは難しいけど「自分、自分、自…

アン・ハサウェイの改宗と映画『ジョヴァンニ・エピスコポの罪』(1947)

アン・ハサウェイの記事を読んでいて、「エピスコパリアン派」という言葉に出会う。エピスコパリアンって聞いたことあるけどなんだったっけ? 記事からハサウェイの言葉を引いておこう。「私の兄がゲイであることをカミングアウトした後、家族全員がカトリッ…

『Roma città libera』(1946)短評

YT. 23-146。 日本語にすれば『自由都市ローマ』。1946年のマルチェッロ・パッリェーロの監督作品。パッリェーロといえば、ロッセリーニの『無防備都市ローマ』でドン・ピエトロ神父(アルド・ファブリーツィ)とともに逮捕されるレジスタンスのマンフレーデ…

映画の生まれるところ:短編映画上映会SIC@SIC2022@イタリア文化会館

昨日の金曜の夜、九段のイタリア文化会館に行く。「短編映画上映会、SIC@SIC2022」の上映前に解説を頼まれていた。雨だったけど、文化会館のホールにはけっこうな方がいらしゃっていた。ありがたいことだ。 ホールに入る前に館長のデ・マイオさんとおしゃべ…

クラウディア・カルデイナーレ、映画と人生

横浜でクラウディア・カルディナーレのことを話してきました。「懐かしの俳優たち」と銘打っての2回目です。きっかけは今年の初めにジーナ・ロッロブジジダの訃報に触れたこと。新聞にも追悼記事が出たのですが、日本のものは何かが足りない。調べてみれば…

Claude d'Anna『Trompe-l'œil(Broken mirror)』(1975)短評

N座2。アメリカ版のBD( Mondo Macabra)。'23-118。 ギリシャ映画の『欲望の沼』(1966)に続いて、フランス・ベルギー映画。これはフィルマークスには見当たらない。日本公開もなし。日本版のメディアも見当たらない。 映画のフランス語タイトルは「Tromp…

ジャンニ・アメリオ『I ragazzi di via Panisperna』(1988)

YouTube にて鑑賞。23-104。PALのVHSは持っているのだけどプレイヤーがない。RaiPlay にあったのだけど日本からだと見せてもらえない。幸いにも誰かがYTに1部と2部をアップしてくれていた。感謝。Filmaks にないのでこちらに書く。このところアメリオを…

エットレ・スコラ『Permette? Rocco Papaleo』(1971)短評

某所N座にてイタリア版DVD鑑賞。冒頭のトラベリング。ふたりの労働者風の男の歩く姿をカメラが追う。こんな感じの長回しのトラヴェリングって、最近ではキュアロンの『ROMA/ローマ』(2018)で見た。でもこれは1971年の映画だから、ちょっと新しい気がする。…

『愛を語っておくれ、マリュー』を訳してみた

先日あるパーティで、友人がこの歌を歌ってくれた。そのときの流れで、歌う前にこの歌詞を即興で訳すことになったのだけど、あらためて読み返してみると、じつにいい歌だ。 作詞はエンニオ・ネーリ(1891–1985)。作曲はチェーザレ・アンドレア・ビクシオ(1…

ジーナ・ロッロブリージダ:パンと恋と夢を生きたアーティスト

今年のはじめ、ロッロブリージダの訃報が届く。去年の暮れに『殺しを呼ぶ卵』(1967)の「最長版」を見たばかり。そのときは、まだ生きているのかとおぼろげに思っていた。訃報が届いたとき、イタリアの記事に目を通した。上にあげたのは、ローマで今月9日か…

ザンパ『Campane a martello』(1949)短評

ロッロブリージダ祭り。YTで鑑賞。23-75。これも名作。これは手元に置いておきたい。アマゾンでクリスタルディ・フィルムのコレクションを発見。3000円は高くない。クリック。 それにしてもルイージ・ザンパはよい。フライアーノなどから、ハッピーエン…

ベロッキオ『夜のロケーション』短評

イタリア版のBDで鑑賞。23-55。字幕はなし。特典は短いバックステージ3本。 イタリア映画祭では「夜のロケーション」という邦題。わるくない。ただ原題の「Esterno notte」はシナリオの用語で「屋外、夜」の意。ここで意識される「夜」は、アルド・モーロの…

おしゃべりなロボットとぼくらのエティカ・エロイカ

こんなツイートが目についた。 教育現場におけるAI騒ぎを見ていると、90年代初頭に教員をしていた方は当時のワープロ騒ぎを思い出すのでは?「ひらがなを打つだけで漢字が出て来るなんて!こんなものを使ったら漢字が書けなくなる。ワープロのレポートは禁止…

金とアノレクシア:ガッローネ『Primo amore』(2004)をめぐって

イタリア版DVDにて鑑賞。Filmaks に作品がなく、こちらにメモ。23-34。 ようやくキャッチアップ。見るのを少し躊躇していたのだ。原作は、痩せた女性が好きで、恋人に痩せることを求め、自分が見守るなかで痩せてゆく恋人に恋する男の自伝小説。でもガッ…

クライ・ミー・ア・リヴァー、訳してみた

www.youtube.com この曲を初めて聴いたのはエアロスミスのヴァージョンだった。「クライ・ミー・ア・リヴァー」というフレーズが耳に残る。いい歌だと思っていた。 それが今日、偶然に上の動画を見た。『女はそれを我慢できない』(1956)のなか、この曲最が…

『Bring On The Lucie (Freda Peeple)』、あるいはキュアロンのレノンを訳してみた

8年ぶりにキュアロンの『トゥモロー・ワールド』(2006)を見直した。未見だったナギちゃんと一緒に見た。なんだかやたらと動物が出てくるねと言う。確かにそうだ。そしてラストシーンにかかるレノンの曲に「なんでここでこの曲なの?」と声をあげる。「キ…

ミーナとレ・ティグリ、『熊座の淡き星影』より

『熊座の淡き星影』だけど、メイン音楽はセザール・フランクの『前奏曲、コラールとフーガ』。これが執拗に演奏される。最初はこのシーン。 youtu.be 次に印象的なのは、イタリアのポップス。最初にかかるのが Le Tigri の『if you don’t want』。ビートルズ…